プロダクトとブランドの関係性 パート3
目次
【第3部】プロダクトとブランドの関係性を活かした飲食店のインスタグラム戦略
第1部では料理(プロダクト)よりもお店の世界観(ブランド)が重要である理由を、第2部ではお客様の脳がブランドを優先して選択するメカニズムを解説しました。この第3部では、これらの知識を活かした具体的なインスタグラム運用戦略と実践方法についてご紹介します。
- 第1部:料理よりも店の世界観が重要 – 飲食店のインスタグラム運用の本質
- 第2部:お客様の選択心理を理解する – ブランド優先の脳のメカニズム
- 第3部:プロダクトとブランドの関係性を活かした飲食店のインスタグラム戦略(本記事)
- ブランドピラミッド(WHY→HOW→WHAT)を基盤にインスタグラム戦略を構築する
- 料理(プロダクト)とお店の世界観(ブランド)を結びつける5つの投稿タイプを活用する
- ビジュアル表現の一貫性でブランドの記憶と認知を高める
- インスタグラムでの共感を実際の来店行動につなげる具体的な方法
こんな悩みを解決します
- 「料理(プロダクト)と店の世界観(ブランド)、インスタグラムではどう両立させればいいの?」
- 「プロダクト以上の価値をどうやって写真や動画で表現すればいいの?」
- 「ブランドを強化するためのインスタグラム投稿って具体的にどうすればいいの?」
これらの悩みを解決するために、プロダクトとブランドの関係性を正しく理解した上での、具体的なインスタグラム戦略をご紹介します。
1. ブランドピラミッドを構築する:料理を超えた価値の表現
インスタグラム運用の基盤として、まずはあなたのお店の「ブランドピラミッド」を明確にしましょう。ブランドピラミッドとは、以下のような階層でブランドの価値を整理したものです:
ブランドピラミッドの構築:
- 最上位:WHY(なぜこのお店があるのか)
- お店の存在理由、大切にしている価値観、創業ストーリー
- 例:「地域の食材を守りたい」「伝統技術を次世代に」「忙しい人に一息つける場所を」
- 中間層:HOW(どのようにそれを実現しているか)
- 調理へのこだわり、空間づくりの工夫、接客の特徴
- 例:「地元農家との直接取引」「40年修行した技術」「居心地の良い空間設計」
- 最下層:WHAT(何を提供しているか = プロダクト)
- 具体的なメニュー、料理、価格
- 例:「季節の野菜カレー」「特製握り寿司」「ブレンドコーヒー」

多くの飲食店のインスタグラム運用では、「WHAT(何を提供しているか)」つまりメニューや料理の写真ばかりを投稿しがちです。しかし、真に魅力的なアカウントにするためには、「WHY(なぜ)」と「HOW(どのように)」も含めたバランスの取れた発信が必要です。
実践方法:あなたのお店のブランドピラミッドを整理する
以下の質問に答えて、あなたのお店のブランドピラミッドを整理してみましょう:
WHY(なぜ)
- なぜこのお店を始めましたか?
- このお店を通じてどんな価値を提供したいですか?
- お客様の生活にどのような変化をもたらしたいですか?
HOW(どのように)
- その価値をどのように実現していますか?
- どんなこだわりや工夫がありますか?
- ほかのお店と何が違いますか?
WHAT(何を)
- 具体的にどんな料理やサービスを提供していますか?
- 人気メニューは何ですか?
- 季節ごとの特徴は?
インスタグラムの投稿では、このピラミッドをバランスよく表現することで、料理(プロダクト)を超えた価値を伝えることができます。例えば、WHY:30%、HOW:40%、WHAT:30%くらいの割合で投稿を計画すると、単なる「料理紹介アカウント」から一歩抜け出すことができるでしょう。
2. プロダクト(料理)とブランド(世界観)を結びつける5つの投稿タイプ
次に、料理(プロダクト)とお店の世界観(ブランド)を効果的に結びつける投稿タイプをご紹介します。これらを組み合わせることで、単なる「料理紹介」を超えた魅力的なアカウントになります。

- プロダクト主体 × ブランド要素付加型:
- 料理写真がメインだが、ブランドストーリーを添える
- 例:「この牛丼は創業者の祖父が考案した特製ダレが決め手。三代続く味です」
- ブランド主体 × プロダクト関連付け型:
- お店の価値観や世界観がメインで、それが料理にどう反映されているかを伝える
- 例:「私たちが大切にする『地産地消』の考え方。その結果生まれたのがこの季節限定サラダです」
- プロセス紹介型:
- 料理が出来上がるまでの過程を通して、こだわりや技術を伝える
- 例:「毎朝4時から仕込むこだわりのスープ。12時間かけて完成します」
- 人×プロダクト型:
- 料理人やスタッフと料理の関係性を伝える
- 例:「パティシエの田中が10年の経験を活かして作る季節のタルト」
- 顧客体験型:
- お客様がプロダクトを通じて得られる体験や感情を表現
- 例:「雨の日に食べたい、心が温まるスープカレー」
具体的な投稿計画例:イタリアンレストランの場合
以下は、5つの投稿タイプをバランスよく組み合わせた1週間の投稿計画例です:
- 月曜日:プロダクト主体型「今週のパスタランチ」(料理写真+シェフのこだわり)
- 火曜日:ブランド主体型「イタリア・トスカーナ地方から学んだ食材選びの哲学」
- 水曜日:プロセス紹介型「手打ちパスタができるまで」(調理動画)
- 木曜日:人×プロダクト型「料理長が地元市場で見つけた今が旬の食材」
- 金曜日:顧客体験型「週末の夜に楽しむワインとアンティパスト」
- 土曜日:店内・雰囲気紹介「夜のキャンドルライトで彩られるテーブルセッティング」
- 日曜日:お客様の声「先週末いただいた素敵なお客様の感想」
これらを組み合わせることで、「単なる料理」から「ブランドの一部としての料理」へと価値を高めることができます。すべての投稿で「美味しそうな料理」以上の価値を表現することを意識しましょう。
3. ブランドとプロダクトの一貫性を保つビジュアル表現
インスタグラムでは、視覚的な一貫性がブランドの認知と記憶に大きく影響します。以下の点に注意して、ブランドとプロダクトの一貫性を表現しましょう:
実践ポイント:
- カラースキーム:お店のブランドカラーを意識した写真の色調整
- 例:和食店なら落ち着いた和色、イタリアンならイタリア国旗カラーを基調に
- 構図の統一:特定のアングルや構図を反復使用
- 例:毎週月曜日は真上からの俯瞰撮影、特定のテーブル位置から撮影など
- ビジュアル要素の統一:特徴的な食器、テーブルクロス、小物などを一貫して使用
- 例:オリジナルの木製トレイを毎回使用、特徴的な柄のナプキンを入れるなど
- 編集スタイルの統一:特定のフィルターや編集スタイルを一貫して使用
- 例:明るく爽やかな編集スタイル、コントラストを強調した編集スタイルなど

これらの一貫性により、個々の料理写真(プロダクト)を見ただけで、お店(ブランド)を想起させる効果があります。インスタグラムのグリッド画面(9枚表示)を見たときに、統一感のある印象を与えることが重要です。
実践テクニック:ビジュアルの一貫性を保つ方法
- プリセットを活用する:写真編集アプリ(Lightroom、VSCO、Snapseedなど)で、あなたのブランドに合ったプリセットを作成し、すべての写真に適用する
- 撮影環境を統一する:同じ場所、同じ光源(自然光または人工光)、同じバックグラウンドで撮影する
- グリッドプランニングを行う:投稿前に9枚のグリッドがどう見えるかを計画するアプリ(Planoly、Latterなど)を活用する
- テンプレートを作成する:文字入れやデザイン要素のテンプレートを作り、同じスタイルを維持する
4. プロダクトからブランドへの導線を設計する
単なる料理紹介に終わらないよう、プロダクト(料理)からブランド(お店の世界観)への導線を意識しましょう:
実践ポイント:
- 料理の背景にブランドストーリーを添える:
- 例:「この豚肉は○○県の契約農家から。私たちが大切にする『顔の見える食材』の一つです」
- プロダクトの詳細からブランド価値へ拡張:
- 例:「手打ちパスタにこだわる理由は、本場イタリアで学んだ『手仕事の大切さ』を伝えたいから」
- 複数投稿での関連付け:
- 例:月曜に料理写真、火曜にその料理の背景ストーリー、水曜にシェフの想いなど関連投稿で深める
- ハイライトでのカテゴリー化:
- 例:「季節のメニュー」「こだわりの食材」「シェフのストーリー」など、プロダクトとブランドを結ぶストーリーをカテゴリー化

これにより、お客様は単なる「美味しそうな料理」以上の価値を認識し、ブランドへの共感と愛着が生まれます。テキストキャプションやストーリーズの活用も効果的です。
5. ブランド体験としての来店を促すアクションプラン
最終的には、インスタグラムでの共感を実際の来店につなげることが重要です:
実践ポイント:
- ブランド限定体験の提案:
- 例:「インスタをご覧のお客様限定の隠れメニュー」「シェフと話せる特別席」など
- プロダクト以上の来店価値の提示:
- 例:「料理だけでなく、窓からの桜の眺めも楽しめるのは今週だけ」など
- ブランドファンへの特別な価値提供:
- 例:「フォロワーの皆様には新メニューを一足先に」「いつも来てくださる方へのサプライズ」など
- オンライン×オフラインの連携:
- 例:「インスタで紹介したストーリーの続きは、店頭のブックレットで」など
これらの施策により、インスタグラムでのブランド共感が、実際の来店行動へとつながりやすくなります。
成功事例:インスタグラムから実店舗への誘導
あるカフェでは、以下のような取り組みで、インスタグラムから実店舗への来店率を3倍に高めることに成功しました:
- ストーリー性のある投稿:単なるコーヒーの写真ではなく、「このコーヒー豆にまつわる生産者のストーリー」を紹介
- 体験価値の強調:「このような時間を過ごせます」という世界観表現
- 参加型コンテンツ:「あなたの好きなコーヒーのいれ方は?」など、コメントを促す質問
- フォロワー限定特典:「インスタを見たと言っていただくと、本日のクッキーをサービス」など
これらを通じて、単なる「カフェ」ではなく「特別な体験ができる場所」というブランドイメージを確立し、来店行動につなげています。
6. インスタグラムの機能を最大限に活用する
最後に、インスタグラムの各機能を活用して、プロダクトとブランドの関係性を効果的に伝える方法をご紹介します:
- フィード投稿:ブランドの世界観を表現する質の高い写真・動画(長期的な資産)
- ストーリーズ:日常的な様子、舞台裏、短期的な情報(24時間で消える気軽さを活用)
- リール:料理の作り方、店内の雰囲気、スタッフの紹介などを短い動画で表現
- IGTV:長めの動画で、シェフのインタビューや料理の詳しい解説など
- ガイド:「季節のおすすめコース」「初めての方向けガイド」など、まとまった情報を提供
- ハイライト:「メニュー」「こだわり」「アクセス」など、重要情報をカテゴリー別に整理
これらの機能を組み合わせることで、お店のブランド世界観をより立体的に表現することができます。例えば、フィード投稿では「完成された料理」、ストーリーズでは「その料理ができるまでの過程」、リールでは「シェフの技術」、ハイライトでは「料理にまつわるストーリー」といった具合に役割分担するとよいでしょう。
まとめ:プロダクトを超えたブランド価値の時代
飲食店のインスタグラム運用成功の鍵は、「プロダクト(料理)」と「ブランド(お店の世界観)」の正しい関係性を理解し、それを視覚的に表現することにあります。
重要なポイントをおさらいすると:
- 料理(プロダクト)はブランドを構築するための手段:どんなに素晴らしい料理も、ブランドの文脈の中で初めて真の価値を発揮する
- お客様の脳はブランドを先に選ぶ:カテゴリー→ブランド→プロダクトの順で選択が行われる
- インスタグラムではブランドストーリーとプロダクトを結びつける:料理写真だけでなく、その背景にある価値観やストーリーを伝える
- 視覚的一貫性がブランド記憶を強化する:色調、構図、要素の統一がブランド認知を高める
- ブランド体験としての来店を促す:インスタグラムでの共感を、実際の来店行動につなげる工夫をする

これらを意識して投稿を設計することで、単なる「美味しそうな料理の写真」から、「共感と愛着を生むブランド発信」へとステップアップすることができます。お客様は料理だけでなく、あなたのお店が提供する世界観や体験に惹かれて来店するようになるでしょう。
「プロダクトよりブランドが重要」という原則を理解し、インスタグラムでそれを表現できれば、飲食店の集客と顧客ロイヤルティは確実に向上します。ぜひ明日からの投稿に取り入れてみてください!
- 第1部:料理よりも店の世界観が重要 – 飲食店のインスタグラム運用の本質
- 第2部:お客様の選択心理を理解する – ブランド優先の脳のメカニズム
- 第3部:プロダクトとブランドの関係性を活かした飲食店のインスタグラム戦略(本記事)

名古屋の飲食業界で商品開発や販促に15年携わる。現在はスイーツECを展開しつつ、飲食・EC向けに撮影を通じたビジュアルマーケティングを支援。
食と空間の魅力を引き出すためのブランディングや販促のヒントを発信中。