【第3部】フォトグラファー直伝!メニュー撮影・投稿のポイント集

写真撮影ノウハウ

はじめに

「完成形を見せる」「アクションを取り入れる」「視認性を最優先する」── 前回までに紹介した新ルールは、飲食店SNS運用において本当に「食べたくなる」ビジュアルを作るために欠かせない考え方でした。

では、それを実際に現場で活かすにはどうすればいいのでしょうか?

今回は、忙しい店舗オペレーションの中でもすぐ取り入れられる、具体的な撮影・投稿ポイント集をお届けします。カメラや照明機材の選び方から、シャッターチャンスの見極め方まで、実践的な内容です。

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撮影前に押さえるべき基本設計

まず、撮影前に意識すべき基本設計は次の3つです。

【基本設計】

  • 主役を決める → 何を「一番食べてほしい」のか?(ステーキ?ピザ?ケーキ?)
  • 完成の瞬間を撮る → 「完成後すぐ」「食べる直前」の状態を意識して撮る。
  • アクションを準備する → 塩ふり、カット、湯気をすくうなど、撮りたい動きを事前に想定しておく。

これだけで、SNS映えのクオリティは劇的に変わります。撮影のプロは、常にこの3つを念頭に置いてフレーミングやシャッターチャンスを見極めています。

【撮影編】実践ポイントリスト

ここでは現場で即使える撮影のコツをリスト形式でまとめます。

【完成形を捉える撮影術】

  • 出来上がった料理を、テーブルに置いたらすぐ撮影(一眼レフやスマホを三脚にセットしておくとベスト)
  • 盛り付けの最後にハーブやトッピングを添える瞬間を狙う(照明の角度を45度にすると立体感が出る)
  • スープなら、表面の揺れや泡が残っているうちに撮る(0.5秒の差で見栄えが大きく変わる)
  • ケーキなら、カットした断面が乾かないうちに撮る(水スプレーを細かく吹きかけると潤いが復活)

料理写真は「光の方向」で決まります。窓際の自然光が理想ですが、LEDリングライトを手元に置いて、料理の斜め上45度から照らすだけでも劇的に変わります。光が強すぎる場合は、白いクッキングペーパーを間に挟んで拡散させるとプロ並みの仕上がりに。

【アクションを入れる撮影術】

  • カットシーンを動画や連写で記録(スマホなら「連写モード」、一眼レフならバースト撮影で15〜20コマ/秒の設定がベスト)
  • 仕上げの塩ふりは、腕や手元ごと写す(シェフの指先までフレームに収めると臨場感アップ)
  • とろけるチーズの引き伸ばしは、2人掛かりで撮影すると成功率アップ(一人が引き伸ばし、一人がカメラ操作に専念)
  • 湯気は逆光で撮ると、より立体的に美しく見える(窓際や明るい光源を背にして撮影するとシルエット効果で湯気が際立つ)

【視認性を高める撮影術】

  • 料理にしっかり光を当て、背景を暗めにして料理を浮かび上がらせる(プロはレフ板や反射板で細かく光をコントロール)
  • ピントは主役の食材部分にしっかり合わせる(スマホでも画面タップでピント合わせ位置を指定できる)
  • 湯気やスモーク演出時も、料理本体が見えない構図はNG(演出効果より「何を食べるか」が伝わることを優先)
  • 断面を撮るときは、やや斜め上からの角度を意識する(真上からではなく25〜35度の俯角がベスト)

美しい料理写真の大敵は「影」です。特にスマホのフラッシュを直接当てると、強い影ができて料理が不自然に見えます。照明は必ず間接的に、できれば複数方向から当てましょう。どうしても影ができる場合は、白い紙や小さなレフ板を影の部分に置くだけでも改善します。

【投稿編】実践ポイントリスト

【キャプション編】

  • 「今すぐ食べたくなる」言葉を入れる
    • 例:「焼きたての香ばしさが広がる」「肉汁溢れるジューシー感」「シェフの手仕事が光る一皿」
  • 完成形にちなんだ表現をする
    • 例:「仕上げのひと振りで味が決まる」「この一皿、できたてです」「カメラを構える前に食べたくなる瞬間」

【ストーリーズ&リール編】

  • ストーリーズなら順番を意識する
    • 【シズルの工程 → 完成直後 → カットアクション】という流れにすると臨場感アップ。
  • リール動画なら必ず「完成カット」を最後に持ってくる
    • 完成カットで動画を締めると、保存率やシェア率が伸びやすい。
  • 投稿の最初のサムネイルは「完成形」にする
    • 未完成状態はサムネに使わない(クリック率が落ちやすい)。

よくある失敗と改善策

ありがちな失敗改善策
シズル演出にこだわりすぎて料理本体が見えないピントとアングルで主役を明確に。演出は主役を引き立てる脇役と考える
工程写真ばかりで「完成形」がない最後に必ず完成形アップを入れる。できればフィードの先頭にも配置
キャプションが説明的すぎる感覚に訴える言葉を使う。「口どけなめらか」「とろ〜り溢れる」など感性言語を
照明が不自然(フラッシュの直射など)自然光か、間接照明で。LEDライトも拡散させて使用する
忙しさで撮影が後回しになり、料理が冷めてから撮影撮影場所と道具を事前準備。「出来上がったら〇〇に置いて」と決めておく

【まとめ】

飲食店SNS運用において、「シズル感」だけに頼らず、完成形・アクション・視認性を意識して撮影・投稿を設計することで、フォロワーの「食べたい!」をよりダイレクトに引き出すことができます。

大切なのは、本能に訴えかける「食べ頃の瞬間」を切り取ること。プロカメラマンは何百枚も撮影する中から、この「決定的瞬間」を見極める眼を持っています。

現場の忙しさの中でも、この基本ルールを押さえれば、撮影・投稿の効果は必ず変わります。最高の一皿を最高の一枚に収めて、お客様の食欲を刺激しましょう!

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