多角的なチャネル戦略とビジュアル:『yutoriに学ぶEC戦略』part2

EC ブランディング

前回のパート1では、株式会社yutoriが2025年3月期に記録的な業績を達成し、驚異的な成長を続けている現状を数字から読み解きました。過去最高を更新し続ける売上と利益、そして積極的な事業拡大の姿勢は、EC業界における彼らの存在感を際立たせています。

ではこの勢いのある成長は、具体的にどのような戦略によって支えられているのでしょうか?パート2では、yutoriの決算資料から学ぶべき重要な要素の一つである「多角的なチャネル戦略」に焦点を当て、特にアパレルやコスメといった「見せ方」が重要な商材を扱う上で不可欠となる「高品質な撮影」との関係性について深掘りしていきます。

なぜyutoriは多様なチャネルで戦うのか?

yutoriの販売戦略の特徴は、単一のチャネルに依存しない多角的な展開にあります。彼らは主に以下のチャネルを組み合わせて顧客にアプローチしています。

  • 自社EC: 32.2%
  • プラットフォームEC(ZOZOTOWNなど): 22.2%
  • オフライン店舗(直営店、POPUP): 39.0%
  • 卸販売: 4.7%
なぜyutoriは多様なチャネルで戦うのか

注目すべきはEC発の企業でありながら、オフラインチャネルが全体の約4割を占め、自社ECと合わせると利益率が高いとされるチャネルで売上の7割以上を上げている点です。

なぜこのような多角的なチャネル戦略がyutoriの成長を加速させているのでしょうか?その理由は複数考えられます。

顧客接点の最大化

 現代の消費者は商品の発見から購入に至るまで、オンラインとオフラインを行き来し、様々なチャネルを利用します。多様なチャネルに存在することでより幅広い顧客層にアプローチし、ブランドとの最初の接触機会を最大化できます。

チャネルごとの役割分担と相乗効果

各チャネルはその特性に応じて異なる役割を担い、相互に補完し合います。プラットフォームECは強力な集客力で新規顧客を呼び込み、自社ECはブランドの世界観を深く伝え、顧客データを活用したリピート促進に貢献します。オフライン店舗は商品を直接体験してもらい、購買意欲を高め、顧客エンゲージメントを深める場となります。これらのチャネルが連携することで単一チャネルでは実現できない相乗効果を生み出し、顧客獲得から育成、そして売上最大化へと繋がるのです。yutoriが渋谷109でのPOPUPや名古屋タカシマヤでの新規出店で大きな成果を上げていることは、オフラインチャネルの集客・販売促進効果を如実に示しています。

リスク分散

 特定のチャネルに過度に依存することは、プラットフォームの規約変更や市場環境の変化といった外部リスクに対して脆弱になります。複数のチャネルを持つことで、リスクを分散し、経営の安定性を高めることができます。

なぜyutoriは多様なチャネルで戦うのか2

チャネルを横断する「高品質なビジュアル」の力

このように多角的なチャネルで展開する戦略において、yutoriが扱うアパレルやコスメといった商材にとって「ビジュアル」は単なる補足情報ではなく、顧客に商品の魅力とブランドの世界観を伝えるための「核」となります。そして、そのビジュアルの質を決定づけるのが「高品質な撮影」です。

なぜ高品質な撮影が多角的なチャネル戦略の成功に不可欠なのでしょうか?それは顧客がどのチャネルにいても、一貫してブランドの魅力を最大限に感じられるようにするためです。

自社EC

ブランドの世界観を表現するメインステージです。商品の詳細だけでなくモデルを使ったスタイリング写真や、ライフスタイルに溶け込むイメージ写真など、ブランドのストーリーを伝えるビジュアルコンテンツが重要です。高品質な写真があることで、顧客はブランドの世界に没入し、商品への憧れや購買意欲を高めます。

プラットフォームEC

数多くの商品が並ぶ中で、自社の商品を際立たせる必要があります。商品の特徴や魅力的なポイントが一目でわかる明るく鮮明で魅力的な写真は、顧客の目に留まりやすくクリックや購入に直接繋がります。第一印象が重要となるプラットフォームでは写真の質が競争力に直結します。

オフライン店舗

実際に商品を手に取れる場ですが、店舗の雰囲気やディスプレイに加え、オンライン上で見た写真の印象も顧客の購買体験に影響します。オンライン上の高品質な写真が店舗への来店を促し、店舗での体験が写真で見たイメージを強化することでブランドへの信頼感が高まります。店舗でのイベント告知などでも、魅力的なビジュアルは集客に不可欠です。

卸販売

卸先の店舗やオンラインストアで自社の商品がどのように見られるかをコントロールするためにも、高品質な写真を提供することが重要です。商品の魅力が正確に伝わる写真があることで、卸先でも販売促進がしやすくなります。

yutoriがInstagramでのビジュアル表現に力を入れ、ブランド担当者が自ら撮影を行うなどSNSを重要なビジュアルチャネルと位置づけていることからも、写真を含むビジュアルコンテンツの重要性がうかがえます。高品質な写真や動画はSNS上でのエンゲージメントを高め、共有されやすく、結果としてブランドの認知度向上やファン獲得に繋がります。またどのチャネルで目にするビジュアルも高品質であることは、顧客に商品の品質やブランドへの信頼感を与える上で非常に重要な要素となります。

チャネルを横断する「高品質なビジュアル」の力

ビジュアル投資は成長への不可欠なコスト

結論として、yutoriの多角的なチャネル戦略の成功は各チャネルの特性を活かし、それらを連携させるだけでなく、チャネルを横断してブランドの魅力を consistent に伝える「高品質なビジュアル」があってこそ成り立っています。アパレルやコスメEC事業者にとって、高品質な商品写真やイメージ写真はもはや「あれば良いもの」ではなく、ブランディング、顧客獲得、売上向上、そして顧客満足度向上に直結する、成長のための不可欠な投資と言えるでしょう。

プロのカメラマンやモデル、スタイリストへの投資、撮影環境の整備などはコストがかかりますが、その投資がECサイトでの購入率向上、SNSでのエンゲージメント向上、オフライン店舗への集客、そしてブランド全体の価値向上に繋がることを考えれば、これはリターンが大きい戦略的なコストと言えます。

多角的なチャネルでブランドを展開するEC事業者はそれぞれのチャネルの特性を理解し、それを最大限に活かすための基盤として、高品質なビジュアル制作に戦略的に取り組むことが、これからのEC業界を勝ち抜くための重要な鍵となるはずです。

ビジュアル投資は成長への不可欠なコスト

次回のパートではyutoriがどのように多様な「ブランド」を育成・拡大しているのか、そしてM&Aがその戦略にどう組み込まれているのかについて深掘りしていきます。

『株式会社yutoriに学ぶこれからのEC業界の戦い方』シリーズ

驚異的な成長を遂げるyutoriの「今」を読む:『株式会社yutoriに学ぶEC業界の戦い方』part1

M&Aと多ブランド戦略で「成長機会」を最大化する:『株式会社yutoriに学ぶEC業界の戦い方』part3

リアル店舗が「体験」を紡ぎ、ビジュアルが顧客を誘う:『株式会社yutoriに学ぶEC業界の戦い方』part4

フォロワー277万超え!SNSを「ブランドのエンジン」にする方法:『株式会社yutoriに学ぶEC業界の戦い方』part5

国境を越えるブランド戦略、写真が拓く海外市場:『株式会社yutoriに学ぶEC業界の戦い方』part6

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