リアル店舗と「体験」とビジュアル:『yutoriに学ぶEC戦略』part4

EC ブランディング

パート3ではyutoriがどのように多ブランド戦略を展開し、M&Aを駆使して事業規模を拡大しているのかを見てきました。多様なブランドを持つことでリスクを分散し、新たな成長機会を掴む彼らの戦略は多くのEC事業者にとって参考となるでしょう。

今回のパート4ではEC主体でありながらyutoriが注力している「オフライン店舗の戦略的活用」に焦点を当てます。なぜデジタルネイティブな企業がリアルな場を重視するのか、そしてそこにおける「高品質なビジュアル」の役割を探ります。

EC時代になぜリアル店舗が増えるのか?

ECが消費の中心となりつつある現代において、yutoriはむしろリアル店舗の展開を加速させています。2025年3月期末時点で、グループ合計で46店舗を運営するまでに至っています。

なぜEC事業者がリアル店舗を持つことが重要なのでしょうか?それはオンラインだけでは提供できない、顧客にとって価値ある「体験」を提供できるからです。

商品のリアルな体験

アパレルであれば試着、コスメであればテスター使用など実際に商品を手に取り、素材感やサイズ感、色などを五感で確かめることができます。これはECにおける写真や説明文だけでは得られない安心感や納得感に繋がります。

ブランドの世界観への没入

yutoriの店舗はそれぞれのブランドコンセプトを反映した空間デザインとなっています。店舗に足を踏み入れることで、オンラインで感じていたブランドの世界観をより深く体験し、共感を深めることができます。

人によるおもてなし

店舗スタッフによる丁寧な接客は、顧客の疑問や悩みを解消し、最適な商品を提案することを可能にします。人間らしい温かみのあるコミュニケーションは、顧客ロイヤリティを高める上で非常に有効です。

即時的な満足

気に入った商品をその場で購入しすぐに持ち帰ることができます。ECのように配送を待つ必要がなく、即時的な満足感を得られます。

EC時代になぜリアル店舗が増えるのか?

yutoriの事例を見ても、9090の渋谷109でのPOPUPが「爆発的な売上を記録」したり 、heart relationの名古屋タカシマヤの2号店がオープン月に同フロアでトップの業績を記録したり と、オフライン店舗が具体的な売上成果に繋がっていることが分かります。また名古屋への初の常設店舗出店や 、PARCO店舗の年間稼働が既存ブランドの成長要因として挙げられていることからも、リアル店舗がブランド成長の重要なドライバーとなっていることが示唆されます。

9090の渋谷109でのPOPUPが「爆発的な売上を記録

オンラインとオフラインを繋ぐ「高品質なビジュアル」

これらのオフライン店舗での成功は、単に店舗をオープンすれば良いというわけではありません。そこに顧客を誘致し、期待感を高めるためには、オンラインでの効果的なアプローチが不可欠です。ここで重要になるのが「高品質なビジュアル」の力です。

魅力的な商品写真やブランドイメージを捉えたビジュアルは、SNSやオンライン広告を通じて顧客の目に留まります。yutoriがInstagramで積極的に高画質なビジュアルコンテンツを発信しているように 、商品のディテールや着用イメージ、店舗の雰囲気などを魅力的に伝える写真は「このブランドの服を着てみたい」「このお店に行ってみたい」という顧客の具体的な行動を促すフックとなります。オンライン上の「見せ方」が、リアル店舗への「誘い水」となるのです。

オンラインとオフラインを繋ぐ「高品質なビジュアル」

体験価値を高めるビジュアルの一貫性

高品質なビジュアルは、オンラインとオフラインの間で一貫したブランドイメージを構築する上でも欠かせません。オンラインストアやSNSで見た商品のイメージと、実際に店舗で見た商品の間に大きなギャップがあると、顧客は混乱しブランドへの信頼を損なう可能性があります。

ECサイトに掲載されている商品写真と同様の品質やトーンで撮影された写真を、店舗のディスプレイやPOPUPの告知に使用することで、オンラインとオフラインの顧客体験をシームレスに繋ぐことができます。yutoriが各ブランドの担当者がブランドの世界観を表現するために撮影を行っていることは、オンライン・オフライン問わず、一貫したビジュアルコミュニケーションを重視しているためと考えられます。オンラインで期待値を高め、オフラインでその期待を超える体験を提供する。この一連の流れを支えるのが、高品質で一貫性のあるビジュアルなのです。

またオフライン店舗でのイベントや限定商品の告知においても、魅力的なビジュアルは集客に大きく貢献します。yutoriがオフラインイベント「PAMM祭り」を開催しブランドファンの増加を実現していることも、イベントの魅力を伝えるビジュアル戦略が成功の一因であったと推測できます。

ビジュアルで最大化する顧客体験

リアル店舗×ビジュアルで最大化する顧客体験

結論としてyutoriの事例が示すように、これからのEC業界においてリアル店舗は単なる販売チャネルではなく、ブランドの「体験価値」を顧客に提供するための戦略的な拠点となります。そしてそのリアルな体験への顧客の期待値を高め、店舗への来店を促し、さらにオンラインとオフラインの間でブランドイメージの一貫性を保つためには、高品質なビジュアル制作が不可欠です。

オンラインでのプロモーションから、リアル店舗での五感に訴える体験、そしてその後のオンラインでの再エンゲージメントまで、顧客ジャーニーのあらゆる段階で高品質なビジュアルは強力なツールとなります。リアル店舗での体験とそれを促進し、強化するビジュアル戦略を組み合わせることで、顧客エンゲージメントを最大化し、ブランドの持続的な成長をドライブすることができるのです。

次回のパートでは、yutoriのもう一つの成長の原動力である「SNS戦略」に焦点を当て、どのように彼らがSNSをコミュニティ構築やブランド育成に活用しているのかを探ります。

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