ECブランド:永続IPの育て方 | サンリオ成長戦略から学ぶpart7
サンリオの驚異的な成長を支える根幹には、彼らが長年培ってきた強力なキャラクターIP(知的財産)の存在があります。そして現在、サンリオはこのIPをさらに進化させ、「グローバルでEvergreenなIP化」を目指す戦略を掲げています。Evergreenとは「常緑樹」のことで、転じて「常に新鮮で、色褪せることなく人々に認知され、好意を持たれ続ける」状態を指します。EC事業においても、短期的な流行に左右されず、顧客との長期的な関係を築き、永続的に愛されるブランドとなることは究極の目標です。本連載では、サンリオの成長戦略から、ECサイト運営に役立つヒントを探っています。
パート7では、サンリオの中期経営計画における主要施策の一つ、「マーケティング・営業戦略の見直しによるグローバルでEvergreenなIP化」に焦点を当て、この「永続IP」を育てるという考え方が、ECにおける長期的なブランド育成や顧客関係構築にどう応用できるのかを探ります。

目次
サンリオが目指す「EvergreenなIP化」とは
サンリオは、中期経営計画において、IPが外的要因に依拠した一過性のブームに左右される状態から脱却し、グローバルで安定的に支持され続けるEvergreenなIPとなることを目指すと明言しています。これは、収益のボラティリティ(変動幅)を抑制し、持続的な成長を実現するための重要な戦略です。
グローバル規模でのブランド価値向上
EvergreenなIP化のためには、特定の地域や世代だけでなく、世界中の人々に常に新鮮な魅力を提供し続ける必要があります。そのためにサンリオは、大型周年イベントなどの「グローバルコンテンツへの投資」や、動画配信チャンネルとの連携による「グローバルプラットフォーマーとの連携」を推進しています。これにより、より多くの人々にキャラクターの魅力や世界観を届け、認知度と好意度を維持・向上させようとしています。
地域ニーズに合わせたローカライズ
グローバルでのEvergreen化には、画一的な戦略ではなく、各地域の文化やトレンドに合わせた柔軟な対応が不可欠です。サンリオは、海外各地域のニーズを起点とした「現地デザイン/現地クリエイティブの強化」に取り組んでいます。これにより、それぞれの市場で顧客に深く響くコンテンツや商品を展開し、地域に根ざしたファン層を獲得・維持しています。
ブランドマネジメントの強化
IPの価値を長期的に維持・向上させるためには、強力なブランドマネジメント体制が求められます。サンリオは「グローバル規模でのブランディング監修の強化」を行うことで、キャラクターイメージの一貫性を保ちつつ、時代や地域に合わせた新しい表現を取り入れています。これは、ブランドの核を大切にしながらも、常に進化し続けるための重要な取り組みです。

ECブランドを「永続IP」として育てる
サンリオの「EvergreenなIP化」戦略から、ECサイトを長期的に成功させ、顧客に永続的に愛されるブランドへと育成するための重要なヒントが得られます。
ECサイトを「体験」のプラットフォームへ
サンリオのIPが愛され続けるのは、単に商品があるだけでなく、キャラクターを通じた豊かな体験を提供しているからです。ECサイトも、単なる物販の場に留まらず、顧客がブランドの世界観に触れ、特別な体験ができるプラットフォームを目指しましょう。限定コンテンツの配信、オンラインイベントの開催、ブランドストーリーを伝えるブログや動画コンテンツの充実などが考えられます。
顧客との継続的なエンゲージメント
永続的なブランド育成には、顧客との強固な関係構築が不可欠です。サンリオがSanrio+のようなロイヤリティプログラムを通じて顧客エンゲージメントの深化を目指しているように、ECサイトでも顧客との継続的なコミュニケーションを重視しましょう。パーソナライズされたメールマーケティング、SNSでの積極的な交流、顧客コミュニティの形成などが有効です。
一貫性のあるブランドメッセージと体験
「Evergreen」であるためには、ブランドの核となるメッセージや世界観に一貫性を持たせることが重要です。ECサイトのデザイン、商品ラインナップ、カスタマーサポート、プロモーション活動など、すべての顧客接点において、ブランドの個性が明確に伝わるようにしましょう。同時に、時代の変化や顧客のニーズに合わせて、ブランド体験を常に新鮮に保つためのアップデートも欠かせません。
データに基づいた顧客理解とパーソナライゼーション
ECサイトでは、顧客の行動データを詳細に分析することができます。このデータを活用して顧客一人ひとりの嗜好やニーズを深く理解し、パーソナライズされた商品レコメンデーションやコンテンツ提供を行うことで、顧客満足度とロイヤリティを高めることができます。
共感を呼ぶストーリーテリング
IPが人々に深く愛されるのは、そこにストーリーや感情移入できる要素があるからです。ECブランドも、自社の創業ストーリー、商品の開発秘話、ブランドに込められた想いなどを積極的に発信し、顧客の共感を呼び起こしましょう。魅力的なストーリーは、単なる商品を越えたブランドへの愛着を生み出します。
顧客参加型のブランド育成
サンリオがファン参加型のキャラクター大賞などを実施しているように、顧客をブランド育成のプロセスに巻き込むことも有効です。新商品のアイデア募集、デザインコンテスト、ユーザーレビューの活用などは、顧客に「自分たちのブランド」という意識を醸成し、より深いエンゲージメントに繋がります。

まとめ
サンリオが中期経営計画で掲げる「グローバルでEvergreenなIP化」は、ECブランドが目指すべき長期的な成長の方向性を示しています。短期的な売上にとらわれず、常に新鮮な魅力で顧客を惹きつけ、深い関係性を構築することこそが、「永続IP」としてのECブランドを育てる鍵となります。
サンリオの戦略から学び、ECサイトを単なる販売チャネルではなく、顧客がブランドの世界観を体験し、共感し、繋がりを感じられる場へと進化させていきましょう。データに基づいた顧客理解、パーソナライゼーション、そして顧客参加型の取り組みを通じて、あなたのECブランドも時代を超えて愛される「永続IP」となる可能性を秘めています。次回パート8では、ECのグローバル展開を支える「グローバル基盤」について詳しく見ていきます。

サンリオ成長戦略から学ぶ【全9話】
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名古屋の飲食業界で商品開発や販促に15年携わる。現在はスイーツECを展開しつつ、飲食・EC向けに撮影を通じたビジュアルマーケティングを支援。
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