【2025年最新調査】EC/飲食事業者が注目すべきSNS広告トレンド
目次
はじめに:変化する消費者の購買行動とSNS広告の重要性
デジタルマーケティングの世界は日々進化を続け、特にSNS広告は消費者の購買行動に大きな影響を与える重要なチャネルとなっています。PRIZMAが実施した「2025年最新版 SNS広告の購買行動調査」は、全国のZ世代(15〜27歳)、Y世代(28〜42歳)、X世代(43〜58歳)を対象に、SNS広告での購入経験について詳細な分析を行いました。
この記事は、デジタル広告の専門メディアであるMarkeZineに掲載された記事を参考に、EC事業者や飲食事業者にとって今後のマーケティング戦略や実際のビジネス現場で活用できる具体的な戦略のヒントを提供いたします。
参考記事:購買につながる広告形式は「動画広告」が2年連続トップに。SNS広告の購買行動調査/PRIZMA調査
購買に直結する広告形式の最新トレンド
動画広告の圧倒的な優位性
2025年の調査においてSNS広告経由での商品購入で最も多かった広告形式は「動画広告」で、回答者の52.5%が購入経験があると回答しました。この結果は2024年調査と一致しており、動画広告の購買への影響力が継続的に高いことを示しています。
動画広告が支持される理由は、「見てすぐ理解できる」という直感的な訴求力にあります。EC事業者の場合、商品の詳細な特徴、実際の使用感、サイズ感などを短時間で効果的に伝えることができます。
飲食事業者においても動画広告の効果は絶大です。調理過程の躍動感、完成した料理の美しさ、店内の温かい雰囲気、スタッフの笑顔など、五感に訴えかける要素を動画で表現することで来店への強い動機を創出できます。特に新メニューの紹介や季節限定商品のプロモーションでは、動画広告の視覚的インパクトが消費者の記憶に残りやすく、購買行動に直結する傾向があります。
ストーリー形式広告の急成長
注目すべきは「ストーリー形式の広告」の成長です。2025年調査では32.9%が購入経験があると回答し、前年から6ポイント以上の上昇を記録しました。この結果は物語性や「続きが気になる」構造を持つ広告が、新たな購買導線として機能し始めていることを示しています。
Z世代では特にストーリー形式の広告への反応が良好で、これは彼らが短時間で次々とコンテンツを消費する習慣と、同時に物語性のある内容に対する関心の高さを反映していると考えられます。
EC事業者は、商品の開発ストーリー、創業者の想い、素材の産地ストーリーなど、ブランドの背景にある物語を効果的に活用することができます。例えば、オーガニック食品のECサイトでは、生産者の顔が見える農場の様子から始まり、丁寧な栽培過程、そして最終的に消費者の食卓に届くまでの一連のストーリーを描くことで、商品への信頼と愛着を深めることができるでしょう。
飲食事業者の場合、季節限定メニューの開発秘話、地域の食材にまつわるエピソード、シェフの料理への情熱など、感情に訴えかけるストーリーを通じて、単なる食事提供を超えた体験価値を伝えることが可能です。
世代別に見る漫画広告の効果
「漫画広告」については、世代によって明確な差が見られる結果となりました。Y世代では上昇傾向が見られる一方で、Z世代では31.6%から22.4%へと減少しており「読む」行為そのものへのハードル感が影響していると分析されています。
この結果はEC・飲食事業者がターゲット世代を明確に設定し、それに応じた広告形式を選択することの重要性を示しています。Y世代以上をメインターゲットとする事業者は漫画広告を活用できる可能性がありますが、Z世代を狙う場合は、より直感的で視覚的な動画やストーリー形式に重点を置く戦略が効果的と考えられます。

SNS広告による新規需要創出の実態
潜在顧客へのアプローチ効果
この調査で特に注目すべき点は、SNS広告が「新たな購買行動のきっかけ」として強力に機能していることです。広告に接触する前から購入予定がなかった層は、前年・今年ともに約7割に上りました。この数字はSNS広告が単なる既存需要の刈り取りではなく、新たな需要を創出する力を持っていることを明確に示しています。
EC事業者にとってこの結果は非常に重要な意味を持ちます。自社の商品やブランドを知らない潜在顧客に対し、SNS広告を通じて効果的にリーチし、購買意欲を喚起することが可能であることを意味しているからです。従来のリスティング広告などの検索連動型広告が既存の需要に対応するものであるのに対し、SNS広告は能動的に新しい市場を開拓できるツールとして位置づけることができます。
飲食事業者においても、この傾向は同様に重要です。地域の競合店との差別化や、新しい顧客層の開拓において、SNS広告を活用した積極的なアプローチが効果的であることを示しています。
世代別の購買行動パターン
世代別に詳しく見ると、Z世代では「買う予定はなかった」層が微減し、事前興味層の比率が上昇しています。これは、商品に関心はあるが検討段階だった層をSNS広告が後押ししている様子を示しており、Z世代に対しては「関心を購買へ転換する」アプローチが効果的であることがわかります。
一方X世代では「購入予定はなかった」層と「商品に興味はあった」層がともに減少し、購入の決め手として広告がより強く作用している構図が浮かび上がっています。これは、X世代に対しては「購買の最後の一押し」としてSNS広告が機能していることを意味しており、より説得力のある具体的な情報提供が重要であることを示唆しています。
印象に残るSNS広告の成功要因分析
商品そのものの魅力が最重要
2025年度の新たな設問として、「最近”いいな”と思ったSNS広告で、印象に残っている点は何ですか」という質問に対し、最も多かった回答は「商品そのものの魅力」(48.3%)でした。この結果はZ世代からX世代まで高い割合を記録しており、広告の技術的な要素よりも、提供する商品やサービス自体の本質的な価値が最も重要であることを明確に示しています。
EC事業者にとって、この結果は商品開発と商品訴求の両面で重要な示唆を与えています。まず、魅力的な商品そのものを開発することが前提条件であり、その上で、その魅力を最大限に伝える広告クリエイティブを作成することが求められます。単に見た目が美しい広告を作るだけではなく、商品の機能性、品質、独自性などの本質的な価値を分かりやすく伝える工夫が必要です。
飲食事業者の場合、メニューそのものの美味しさ、食材の質、調理技術の高さなど、提供する食体験の本質的な価値を前面に押し出すことが重要です。見た目の美しさだけでなく、味わいの特徴や食材へのこだわりなど、食事の本質的な満足度に関わる要素を効果的に伝える必要があります。
デザインと世界観の重要性
次に重要視されたのは「デザインや世界観」(26.4%)と「映像や音楽の印象」(24.8%)でした。これらの要素は、ブランドの個性や価値観を表現し、消費者との感情的な繋がりを創出する上で重要な役割を果たしています。
EC事業者は、商品ページのビジュアルデザイン、ブランドカラーの統一、パッケージデザインなど、一貫したブランド世界観を構築することが求められます。特に、ライフスタイル系商品やファッション関連商品では、その商品を使用することで得られる生活体験や自己表現の価値を視覚的に表現することが効果的です。
飲食事業者においては、店舗の内装、盛り付けの美学、サービススタイルなど、総合的な飲食体験の世界観を統一して表現することが重要です。例えば、カジュアルな親しみやすさを売りにするのか、洗練された大人の空間を演出するのかによって、広告で表現すべき世界観も大きく変わります。
口コミと実体験の価値
「口コミや実体験」(19.7%)も印象に残る要素として挙げられており、特に食品業界ではUGC(User Generated Content)が生まれやすい特性もあり、顧客の実体験に基づいた口コミは強力な要素となります。
EC事業者は実際の購入者によるレビューや使用感の投稿を積極的に活用し、商品の信頼性を高めることができます。また、インフルエンサーではない一般ユーザーの自然な投稿を広告素材として活用することで、より信頼性の高いコミュニケーションが可能になります。
飲食事業者の場合、実際の来店客による料理の写真投稿や、食事体験のシェアを促進し、それらを広告素材として二次活用することで、リアルな魅力を伝えることができます。
過剰演出への警鐘
興味深いことに、「インフルエンサー登場」(15.0%)や「ストーリー性への共感」(12.6%)は比較的限定的な結果となりました。これは過剰な演出や感動的なストーリーよりも、商品の本質的価値を誠実に伝えることが、最も信頼されるコミュニケーションであることを示しています。
Z世代を対象とした別の調査では、「広告っぽさ」が強い広告への購買意欲が下がるという結果も出ており、今回の結果と一致する傾向を示しています。これは、現代の消費者が広告に対してより洗練された判断力を持ち、本質的でない装飾的な要素を見抜く能力を身につけていることを意味しています。

世代別ターゲット戦略の具体的提案
プラットフォーム選択の戦略的考察
SNSの利用傾向を見ると、Instagramは依然として高水準(61.16%)を維持しており、EC・飲食ともに主要なプラットフォームとして活用価値が高いことがわかります。一方、TikTokはZ世代でやや減少傾向(33.97%)を示しており、プラットフォーム選択には慎重な検討が必要です。
EC事業者の場合、Instagramの視覚的な特性を活かし、商品の美しさや使用シーンを効果的に訴求することができます。特にストーリーズ機能を活用したリアルタイムな情報発信や、ライブ配信を通じた商品紹介など、多様な機能を戦略的に活用することが重要です。
飲食事業者にとってInstagramは料理の視覚的魅力を最大限に活用できるプラットフォームです。美しい料理写真や動画を通じて、来店への動機を強く喚起することができます。また、位置情報機能を活用した地域密着型のマーケティングも効果的です。
インフルエンサー活用の新しいアプローチ
コンテンツの主役は引き続き「インフルエンサーや有名人の投稿」(51.7%)ですが、前述の通り、印象に残る広告としてはインフルエンサー登場は限定的という結果も出ています。この矛盾は、インフルエンサー活用の方法を再考する必要性を示唆しています。
効果的なアプローチはインフルエンサーを単なる広告塔として使用するのではなく、商品そのものの魅力を伝える手段として、あるいはブランドの世界観を自然に表現する手段として位置づけることです。過度に宣伝的にならず、インフルエンサー自身の日常の中に自然に商品やサービスを組み込むような表現が求められます。

EC/飲食事業者が今すぐ実践すべき戦略
動画とストーリーの戦略的活用
調査結果を踏まえ、EC事業者は商品の使用方法や効果を短時間で分かりやすく伝える動画コンテンツの制作に注力すべきです。また、商品開発の背景や使用者の体験談をストーリー形式で展開することで、消費者との感情的な繋がりを深めることができます。
飲食事業者は、調理過程の動画や店舗の雰囲気を伝える映像コンテンツ、そして料理や店舗にまつわるエピソードをストーリー形式で発信することが重要です。特に季節限定メニューや地域食材にまつわる物語は、強い購買動機を創出する可能性があります。
本質的価値の明確な訴求
最も重要なのは、商品やサービスの本質的な魅力を最大限に引き出すクリエイティブの制作です。見た目の美しさだけでなく、品質、機能性、独自性など、消費者にとって真の価値となる要素を分かりやすく伝える工夫が必要です。
過剰な演出や感情的な訴求よりも、誠実で透明性のあるコミュニケーションを心がけ、消費者の「納得と関心」を得ることを最優先に考えるべきです。

まとめ:2025年SNS広告成功の要諦
2025年のSNS広告トレンドから見えてきたのは、技術的な革新よりも消費者に対する誠実で本質的なアプローチの重要性です。EC事業者・飲食事業者ともに、商品やサービスの本質的な価値を動画やストーリー形式で効果的に伝え、世代別の特性を理解した上でのコミュニケーション戦略を構築することが、購買に繋がるSNS広告の成功要因となります。
過剰な「広告っぽさ」を避け、消費者の日常に自然に溶け込む形でブランドの価値を伝える姿勢が、今後のSNSマーケティングにおいて最も重要な要素となるでしょう。

この記事は音声でも配信しています。
関連記事

名古屋の飲食業界で商品開発や販促に15年携わる。現在はスイーツECを展開しつつ、飲食・EC向けに撮影を通じたビジュアルマーケティングを支援。
食と空間の魅力を引き出すためのブランディングや販促のヒントを発信中。
撮影プラン詳細はこちら
撮影のご相談はこちら