TikTok Shopの注意点と炎上対策。顧客対応とブランドイメージを守る方法
目次
はじめに:攻めと守りの両輪で、持続的な成長を目指す
TikTok Shopは動画コンテンツと直接購入を組み合わせた革新的なECプラットフォームとして注目を集めています。しかしその拡散力の高さゆえに、一つのミスが大きな炎上につながるリスクも秘めています。
成功するためには単に商品を魅力的に見せるだけでなく、法的リスクを回避し、ネガティブな反応に適切に対処する「守り」の体制も重要です。特に食品や健康食品、化粧品といった分野では、薬機法や景品表示法といった法令への理解が不可欠となります。
この記事ではTikTok Shopを活用する企業が知っておくべき法的注意点、炎上対策、そして顧客対応の具体的な方法について解説します。攻めと守りの両輪で、持続的な成長を実現しましょう。
【法律編】動画コンテンツで注意すべき法令
薬機法:化粧品・健康食品での「効果効能」の表現
薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器等の広告に関する厳格な規制を定めています。
薬機法の対象は製造販売のために厚生労働大臣の承認を受けた医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の「医薬品等」であり、健康食品や雑貨は含まれません。ただし、医薬品等のように誤認される表現をした場合には、承認前の医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品とみなされ、薬機法第68条の違反に該当します。薬機法とは?薬事法との違いや規制内容、罰則などを簡単に解説
TikTok Shopで食品や健康食品を販売する際に特に注意すべき表現例:
禁止される表現例:
- 「ダイエットに効果的」
- 「美肌になる」
- 「疲労回復効果」
- 「血糖値を下げる」
- 「アンチエイジング効果」
適切な表現例:
- 「美容をサポート」
- 「健康的な生活に」
- 「バランスの取れた食生活に」
- 「毎日の元気をサポート」
化粧品については、56の効能効果範囲内での表現に限定されており、それを超える効果効能を謳うことは薬機法違反となります。
景品表示法:優良誤認・有利誤認を招く表現(No.1表示など)
景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)は、消費者の誤認を招く表示を禁止しています。TikTok Shopのような動画コンテンツでは、視覚的なインパクトを重視するあまり、誇大な表現を使用してしまうリスクが高くなります。景品表示法
優良誤認表示の禁止事例:
- 根拠のない「No.1」表示
- 実際よりも優れていると見せかける比較広告
- 体験談の過度な誇張
- 科学的根拠のない効果の主張
有利誤認表示の禁止事例:
- 虚偽の価格比較(「通常価格○○円が特価××円」の虚偽)
- 期間限定を装った常時販売
- 在庫僅少の演出による購買煽り
特にD2Cのビジネスモデルにおいて、なぜ重要なのかという観点から、直接消費者とコミュニケーションを取るTikTok Shopでは、これらの表示規制により一層の注意が必要です。
著作権・肖像権:BGMや映り込みへの配慮
TikTokのようなショート動画プラットフォームでは、BGMや映像の権利処理が複雑になりがちです。
著作権に関する注意点:
- 楽曲の無断使用(商用利用の場合は特に厳格)
- 映像素材の無断転用
- キャラクターや商標の無断使用
肖像権に関する注意点:
- 第三者の顔が映り込んでいる映像の使用
- 有名人の写真や映像の無断使用
- 従業員や関係者の肖像権の事前許諾

【炎上対策編】ネガティブコメントとの向き合い方
炎上のメカニズム:批判が共感を呼び、拡散するまで
SNSでの炎上は以下のステップで進行することが一般的です:
- 初期の批判コメント: 商品や対応への不満表明
- 共感の広がり: 同様の経験を持つユーザーの参加
- 拡散の加速: シェアやリツイートによる情報の拡散
- メディア化: まとめサイトやニュースサイトでの取り上げ
- 企業対応への注目: 対応の良し悪しがさらなる議論を呼ぶ
食品系のTikTok Shopでよく見られる炎上パターン:
- 商品と実際の品質の乖離への指摘
- アレルギー表示の不備や誤解を招く表現
- 過度な健康効果の主張への専門家からの指摘
- 価格設定への批判(同じ商品の他サイトとの価格差)
コメントへの対応基本方針(削除、返信、静観の判断基準)
即座に削除すべきコメント:
- 明らかな誹謗中傷や人格攻撃
- 個人情報の暴露
- 競合他社による営業妨害目的の投稿
- スパムや関係のない内容
丁寧に返信すべきコメント:
- 商品に関する具体的な質問
- 配送や返品に関する問い合わせ
- 建設的な改善提案
- 誤解に基づく批判(事実で訂正可能なもの)
静観が適切なコメント:
- 個人の好みや価値観の違いに基づく批判
- 一時的な感情的反応
- 他のユーザーが適切にフォローしているもの
tiktokのコメント欄で「うざい」「きもい」といった罵倒コメントや「こいつは〇〇(デマ)だ」といった根も葉もないウワサ、人種差別的な内容については、プラットフォームの通報機能を活用することも重要です。
誠実な謝罪と説明が求められるケース
以下の場合は、速やかで誠実な対応が必要です:
即座の謝罪と対応が必要なケース:
- 商品の安全性に関わる問題の発覚
- 法令違反の指摘(薬機法、景品表示法等)
- 明らかな商品説明の誤り
- 差別的表現の使用
謝罪対応の基本構成:
- 事実関係の確認と問題の認識
- 関係者への謝罪
- 原因の説明(可能な範囲で)
- 具体的な改善策の提示
- 再発防止への取り組み

【顧客対応編】TikTok経由の問い合わせと返品フロー
問い合わせ窓口の一元化
TikTok Shopでは、複数のチャネルから問い合わせが発生します:
- TikTok内のダイレクトメッセージ
- コメント欄での質問
- 企業の公式サイトのお問い合わせフォーム
- 電話での直接問い合わせ
これらを効率的に管理するため、以下の体制整備が重要です:
CRM(顧客関係管理)システムの活用:
- 全チャネルの問い合わせを一元管理
- 対応履歴の記録と共有
- 対応優先度の設定と進捗管理
レスポンス時間の明確化:
- TikTok内メッセージ:24時間以内
- コメント返信:6時間以内(営業時間内)
- メール問い合わせ:48時間以内
プラットフォームの規約と自社ポリシーの整合性
TikTok Shopの安全性や規約順守について、企業担当者が押さえておくべきポイントとして、プラットフォーム規約と自社ポリシーの整合性確保が重要です。
確認すべき主要項目:
- 返品・交換ポリシーの一致
- 配送期間の設定
- 禁止商品・サービスの理解
- 個人情報保護方針の整合
食品販売における特別な注意点:
- 賞味期限・消費期限の明記義務
- アレルギー表示の徹底
- 保存方法の詳細説明
- 原産地・製造者情報の開示
低評価レビューへの向き合い方と改善への活用
低評価レビューは貴重な改善情報源として活用できます:
分析すべき観点:
- 商品品質に関する指摘の頻度
- 配送・梱包に関する問題点
- 説明と実際の商品の乖離
- 価格に対する価値の評価
対応プロセス:
- 即座の状況確認: 指摘内容の事実確認
- 個別対応: 可能であれば直接コンタクトを取り解決策を提示
- 公開返信: 他の購入検討者への情報提供
- システム改善: 根本原因の解決に向けた改善実施

ブランドを守るための社内ガイドライン策定のすすめ
参考記事:ECブランディングで差をつける|売れるビジュアル戦略と設計思考のすべて
投稿前のダブルチェック体制
法律関連チェック:
- 薬機法に関わる表現がないか
- 景品表示法違反の可能性はないか
- 著作権侵害の要素はないか
- 肖像権の問題はないか
ブランドイメージチェック:
- 企業価値観との整合性
- ターゲット層への適切性
- 競合他社への配慮
- 社会的な配慮(時事問題等)
技術的チェック:
- 画質・音質の品質確認
- テキスト情報の正確性
- リンク先の確認
- 各デバイスでの表示確認
緊急時のエスカレーション体制
レベル1(軽微な問題):
- 担当者レベルでの対応
- 1時間以内の初期対応
- 上司への報告(24時間以内)
レベル2(中程度の問題):
- 部門管理者の判断を仰ぐ
- 30分以内の初期対応
- 関連部署との連携
レベル3(重大な問題):
- 経営陣への即座の報告
- 15分以内の初期対応
- 緊急対策チームの招集
- 外部専門家(弁護士等)への相談
問題の判断基準:
- 法的リスクの程度
- 影響を受ける顧客数
- メディア露出の可能性
- ブランドイメージへの影響度
継続的な改善のためのPDCAサイクル:
Plan(計画):
- 月次でのリスク評価
- ガイドラインの定期見直し
- 研修計画の策定
Do(実行):
- 日常的な投稿管理
- 顧客対応の実施
- データ収集
Check(評価):
- KPIの測定と分析
- 顧客満足度の調査
- 競合他社との比較分析
Action(改善):
- 問題点の根本原因分析
- プロセスの改善実施
- 教育・研修の充実

TikTok Shopの成功は単なる売上向上だけでなく、長期的なブランド価値の構築にかかっています。法的リスクを適切に管理し、顧客との信頼関係を築き、炎上リスクを最小化する総合的なアプローチが持続可能な成長の鍵となります。
これらの対策を実施することで、TikTok Shopを安心して活用し、ブランドイメージを守りながら事業成長を実現することができるでしょう。定期的な見直しと改善を通じて、変化する環境に適応し続けることが重要です。

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名古屋の飲食業界で商品開発や販促に15年携わる。現在はスイーツECを展開しつつ、飲食・EC向けに撮影を通じたビジュアルマーケティングを支援。
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