楽天・Amazonとの違いは?ECモールと比較するTikTok Shopの強みと弱み
目次
はじめに:販売チャネルの最適化が事業成長の鍵
EC市場の急速な変化とともに、販売チャネルの多様化が企業成長の重要な要素となっています。従来からの楽天市場やAmazonに加え、2025年6月に日本でサービスが開始される予定のTikTok Shopが新たな選択肢として注目を集めています。
特に食品カテゴリーにおいては、インターネット通販の約4割のシェアを持ち、購入者からの信頼が厚い「楽天市場」がおすすめとされてきましたが、動画コンテンツを活用した新しい購買体験を提供するTikTok Shopの登場により、この構図に変化が生まれる可能性があります。2025年版|ECモール出店を徹底比較!
日本国内のTikTok月間アクティブユーザーは3,300万人以上にのぼり、TikTok Shopの導入によって新規顧客との接点が一層強化できるとされており、特に若年層をターゲットとする食品事業者にとって新たなビジネスチャンスとなる可能性が高まっています。
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【比較表】一目でわかる!TikTok Shop vs 楽天 vs Amazon
顧客層 / 集客方法 / 手数料 / 得意カテゴリ / サポート
項目 | TikTok Shop | 楽天市場 | Amazon |
---|---|---|---|
主要顧客層 | 10〜30代中心の若年層 | 35歳以上の女性 | 幅広い年齢層 |
集客方法 | 動画コンテンツ・バズ拡散 | 楽天経済圏・ポイント還元 | 検索・商品名検索 |
販売手数料 | 商品価格の約5〜10%が相場 | カテゴリ別・約2〜7% | 多くが15% |
初期費用 | 未確定(海外では無料が多い) | 有料(プランにより異なる) | 無料 |
月額固定費 | 未確定 | 有料(プランにより異なる) | 大口出品:月額4,900円 小口出品:無料 |
得意カテゴリ | アパレル・コスメ・食品・雑貨 | 食品・日用品・ファッション | 全カテゴリ網羅 |
商品ページ作成 | 動画中心の簡易作成 | HTML・デザイン自由度高 | 統一フォーマット |
サポート体制 | 未確定 | 「楽天大学」と呼ばれる無料オンライン学習コンテンツあり | 「セルフサービス型」のサポート体制 |
TikTok Shopの強み(メリット)
強み1:圧倒的な若年層へのリーチと新規顧客獲得力
TikTok Shopの最大の強みは、従来のECモールではリーチが困難だった若年層への圧倒的なアクセス力です。日本国内のTikTok月間アクティブユーザーは3,300万人以上という巨大なユーザーベースを活用することで、特に10代から30代前半の消費者に直接アプローチできます。
食品カテゴリーにおいても、従来の「検索して購入する」行動パターンとは異なる、「動画を見て衝動的に購入する」という新しい購買行動を促進できる点が特徴的です。特にトレンドに敏感な若年層が好む「映える」食品や、手軽に調理できる食材、話題性のあるスナック菓子などの商材では、高い訴求効果が期待できます。
強み2:「バズ」による爆発的な商品認知の可能性
TikTokの特徴である「バズ」現象を活用することで、短期間で爆発的な商品認知と販売拡大を実現できる可能性があります。食品分野においても、調理動画や食べ歩き動画が拡散されることで、一夜にして話題商品となる事例が数多く見られます。
従来のECモールでは、検索結果の上位表示や広告出稿による段階的な認知拡大が主流でしたが、TikTok Shopでは一つのバズった動画から数万、数十万という規模での商品認知が可能となります。特に見た目のインパクトがある食品や、調理過程が面白い商材では、この効果が顕著に現れます。
強み3:動画によるブランディングとファン育成
動画コンテンツを活用することで、商品の魅力を多角的に伝えられる点も大きな強みです。食品の場合、静止画では伝えきれない「食感」「調理過程」「食べる瞬間の表情」などを動画で表現することで、より強い購買意欲を喚起できます。
また継続的なコンテンツ投稿を通じて、商品やブランドに対するファンコミュニティを形成できる点も特徴的です。単発の販売ではなく、長期的な顧客関係の構築が可能となり、リピート購入や口コミによる自然な拡散効果も期待できます。

TikTok Shopの弱み(デメリットと注意点)
弱み1:「指名検索」での流入が見込めない
TikTok Shopの大きな弱みは、従来のECモールで重要な収益源となっている「指名検索」による流入が期待できない点です。日本のEC利用はこれまで「検索して商品を探す」行動が主流でしたが、TikTokの性質上、ユーザーは受動的にコンテンツを消費するため、特定の商品を積極的に探すという行動パターンが一般的ではありません。
食品カテゴリーにおいても、「○○ 通販」「△△ お取り寄せ」といった具体的な検索キーワードからの流入は期待できないため、既に認知度の高い商品や定番商品の販売には不向きな側面があります。
弱み2:コンテンツ制作の継続的なコストと労力
TikTok Shopで成功するためには、継続的な動画コンテンツの制作が不可欠です。定期的なセール企画やメルマガ配信など、継続的なマーケティング活動も重要という楽天市場と同様に、TikTok Shopでも継続的なコンテンツ投稿が求められます。
食品事業者の場合、調理動画の撮影、編集、投稿という一連の作業を定期的に行う必要があり、これらのコストと労力は決して軽視できません。特に中小規模の事業者にとって、専門的な動画制作スキルを持つ人材の確保や、機材・編集ソフトへの投資は大きな負担となる可能性があります。
弱み3:ブランドイメージの毀損リスク(炎上など)
動画コンテンツによる情報発信は、従来の静的なECページと比較してブランドイメージの毀損リスクが高くなります。不適切な表現や誤解を招く内容が含まれた動画が拡散された場合、短時間で大きな批判を受ける可能性があります。
食品事業者にとって特に注意が必要なのは、食品の安全性や品質に関する情報の取り扱いです。調理方法の説明や保存方法の案内など、間違った情報を発信してしまうと、ブランドの信頼性に深刻な影響を与える恐れがあります。

自社に最適?TikTok Shop向きの商材・向かない商材
【向いている】ビジュアルで魅力が伝わる商材(食品、アパレル、コスメ、雑貨)
TikTok Shopに特に適している食品カテゴリーには以下のような特徴があります:
見た目にインパクトがある食品
- カラフルなスイーツや和菓子
- 断面が美しいケーキやパン
- 形状がユニークなスナック菓子
調理過程が楽しめる商材
- 手作りキットや調理器具
- 簡単に調理できる冷凍食品
- 混ぜるだけで完成する粉末系商品
トレンド性の高い食品
- 話題の海外スイーツ
- 季節限定商品
- 健康志向やダイエット関連食品
これらの商材は動画での表現力が高く、視聴者の興味を引きやすい特徴を持っています。
【工夫が必要】高価格帯の商材、BtoB商材、型番商品
一方で、以下のような商材についてはTikTok Shopでの販売に工夫が必要です:
高価格帯の食品
- 高級グルメ食材
- 贈答用の高級スイーツ
- プレミアム調味料
これらの商材は、衝動購入よりも慎重な検討を要するため、TikTokの特性とは相性が良くない可能性があります。ただし、商品の価値や希少性を効果的に伝える動画コンテンツを制作することで、購買につなげることは可能です。
定番・型番商品
- 基本的な調味料
- 一般的な冷凍食品
- 日用的な食材
これらの商材は差別化が困難で、動画での訴求効果も限定的になりがちです。

まとめ:各モールの特性を理解し、最適なポートフォリオを組もう
TikTok Shop、楽天市場、Amazonはそれぞれ異なる特性を持ち、ターゲット顧客や販売戦略によって最適な選択が変わります。食品事業者にとって重要なのは、単一のモールに依存するのではなく、各プラットフォームの特性を活かした最適なポートフォリオを構築することです。
TikTok Shopは若年層への新規開拓と話題性のある商品の拡散に優れ、楽天市場は食品カテゴリーでインターネット通販の約4割のシェアを持つ安定した販売基盤として機能し、Amazonは幅広い顧客層への商品供給と効率的な物流システムを提供します。
複数のモールに展開することで、リスク分散と売上最大化を図る戦略も有効であり、各モールの手数料体系や運営コストを総合的に考慮しながら、自社の商材特性と経営リソースに最適な組み合わせを見つけることが成功の鍵となります。
2025年のEC市場において、TikTok Shopは既存のECモール構造に新たな変化をもたらす可能性を秘めています。早期に参入することで先行者利益を獲得できる可能性がある一方で、運営ノウハウの蓄積や適切なリスク管理も重要な要素となるでしょう。


名古屋の飲食業界で商品開発や販促に15年携わる。現在はスイーツECを展開しつつ、飲食・EC向けに撮影を通じたビジュアルマーケティングを支援。
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