ストーリー戦略の実践②:顧客を行動に導き「最高の結末」を約束する
前回の記事では顧客を「主人公」として定義し、その「課題」に共感することで、信頼される「導き手」になる方法を解説しました。これであなたと顧客の間には強い信頼の絆が生まれました。
しかし顧客はまだあなたのサービスを購入していません。彼らは成功という向こう岸に渡りたいのに、目の前の「購入」という川の流れを前にして渡ることをためらっています。「本当にこれでいいのだろうか?」「もし失敗したらどうしよう?」と。
今回の記事ではこの顧客の背中をそっと押し、安心して川を渡ってもらうためのストーリー後半の4要素「④計画」「⑤行動喚起」「⑥失敗」「⑦成功」について、具体的なストーリー戦略の実践方法を解説します。
参考:ドナルド・ミラー著 ストーリーブランド戦略―あなたは商品を売っている理由を発信しているか?
目次
【計画】顧客の不安を取り除く「踏み石」を用意する
人が何かを購入するとき、そこには必ず「リスク」を感じます。お金を失うリスク、期待外れに終わるリスク。この不安を解消するために「導き手」が提示するのが、シンプルで分かりやすい「計画」です。
これは川を渡るための「踏み石」のようなものです。「まずこの石に、次にあの石に足を乗せれば、簡単に向こう岸に着きますよ」と示すことで、顧客は安心して一歩を踏み出すことができます。
ECサイト向け「購入までの3ステップ」
複雑な購入プロセスは顧客を混乱させます。購入までの道のりを以下のように3〜4ステップで簡潔に示しましょう。
- 商品をカートに入れる
- お客様情報を入力する
- ご注文を確定する
当たり前かもしれませんが、これだけで「購入は面倒ではなさそうだ」という安心感が生まれます。
飲食店向け「予約から来店までの流れ」
初めてのお店には不安がつきものです。来店までの流れを可視化してあげましょう。
- ご希望のコースと日時を選ぶ
- ウェブで簡単予約(24時間受付)
- 当日は最高の食事と時間をお楽しみください
「予約は簡単そうだな」と感じると来店へのハードルが大きく下がります。

【行動喚起】「さあ、こちらへ」と明確に声をかける
多くの企業が顧客に「何をしてほしいのか」を明確に伝えていません。ストーリーの重要な法則は、「行動を促されない限り、顧客は行動しない」ということです。
あなたのウェブサイトで最も目立つボタンは何であるべきでしょうか?それは間違いなく「今すぐ購入」や「席を予約する」といった、直接的な行動を促すボタンです。これは導き手が主人公に向かって「さあ、こちらへ!」と力強く指し示す、ストーリーのクライマックスなのです。
2種類の行動喚起を使い分ける
行動喚起には大きく分けて2種類あります。
- 直接的な行動喚起(Direct CTA):「購入する」「予約する」「問い合わせる」など、ビジネスの売上に直結するメインのCTA。
- 移行的な行動喚起(Transitional CTA):「資料をダウンロードする」「メルマガに登録する」「無料サンプルを請求する」など、今すぐ購入はしないが関係性を維持するためのサブのCTA。

【失敗】この商品・サービスがないと、どうなる?を伝える
ストーリーには「危機やリスクが必要です。もし主人公が行動しなかったらどうなるのか?何かを失う可能性がなければ、誰もそのストーリーに関心を持ちません。
人間は何かを得る喜びよりも、何かを失う痛みを2倍以上強く感じるようにできています(損失回避性)。
参考記事:ECコンバージョン率を劇的に変える—プロスペクト理論とフードフォト
あなたのサービスを利用「しない」場合に、顧客が被る不利益や悲しい結末をはっきりと示してあげましょう。
【EC向け】「安物買いの銭失い」のリスク
『「安かったけど、結局すぐにダメになった…」そんな後悔をしてほしくないのです。私たちはお客様に一時の満足ではなく、本当に価値ある一品を長く愛用していただくことで得られる、本物の満足感と安心をお届けしたいと考えています。』と、賢い選択をしないことのリスクを伝えます。
【飲食店向け】「記念日が台無しになる」未来の回避
「せっかくの記念日、お店選びに失敗して、忘れられないはずの一日が忘れたい一日になってしまったら悲しいですよね?」と、最高の選択肢を逃すことの損失を伝えます。

【成功】手にした後の「最高の未来」を描く
いよいよストーリーの最終章です。顧客があなたのサービスを購入した結果、どんな素晴らしい未来が待っているのか。その「成功」のビジョンを推測させるのではなく、必ず言葉とビジュアルで具体的に見せてあげましょう。
顧客がお金を払って本当に手に入れたいのは、商品やサービスそのものではなく、それによってもたらされる「理想の自分」や「最高の体験」です。
【最重要・写真のヒント】「最高の未来」を一枚の決定的な写真で伝える
ストーリー戦略において、写真への投資が最も効果を発揮するのが、この「成功」の要素です。顧客が「こうなりたい!」と強く願う理想の瞬間を切り取った一枚の写真。これが顧客の感情を揺さぶり、購入を決定づける最終的な引き金となります。
ECサイトなら商品を使ったことで得られた満ち足りた笑顔。飲食店なら最高の料理とサービスに包まれた、記憶に残る感動の瞬間。ここにこそプロのフォトグラファーの力を借りる価値があります。この「最高の未来」を約束する写真一枚があなたの事業の成長を力強く牽引します。

まとめ:あなたのビジネスを、顧客の成功ストーリーを完成させるためのツールにしよう
これまでストーリー戦略におけるフレームワークを解説してきました。
主人公である顧客が、課題に悩み、信頼できる導き手(あなた)に出会う。導き手は、成功への計画を示し、勇気を持って行動するよう促す。その結果、主人公は失敗を回避し、目指すべき成功を手に入れる。
この力強いストーリーの型に沿って、あなたのメッセージを再構築してください。顧客という主人公がその人自身の人生というストーリーで成功を収めるために使う、強力な「武器」や「魔法の道具」となります。

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名古屋の飲食業界で商品開発や販促に15年携わる。現在はスイーツECを展開しつつ、飲食・EC向けに撮影を通じたビジュアルマーケティングを支援。
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