ECの要!売れる商品と供給体制 | サンリオ成長戦略から学ぶpart6
サンリオが達成した目覚ましい業績は、単に魅力的なキャラクターや商品を開発する力だけでなく、それらを顧客の手元に確実に、そして効率的に届ける供給体制の強さによって支えられています。特に拡大を続けるEC市場において、この「効率的な供給体制」は、顧客満足度を向上させ、売上機会の損失を防ぐための生命線となります。本記事ではサンリオの取り組みを参考に、ECサイト運営における供給体制構築の重要性とその要素について深掘りします。
目次
Sanrio:決算短信
なぜECにおいて供給体制が重要なのか
ECサイトでは顧客は商品を直接手に取ることができません。そのためサイト上での商品情報(画像、説明文、在庫状況など)が全てであり、注文から配送までのプロセスが顧客体験の質を決定づけます。在庫がないにも関わらず注文を受けてしまったり、配送が遅延したりすれば、顧客満足度は著しく低下し、リピートに繋がりにくくなります。最悪の場合、ブランドイメージの棄損にも繋がりかねません。
販売機会の最大化
適切な供給体制は売れる商品を「売れる時に」確実に販売するために不可欠です。需要があるにも関わらず在庫がない「欠品」は、そのまま売上機会の損失に直結します。特にトレンド性の高い商品や季節商品は、販売できる期間が限られているため、供給体制の不備は大きなダメージとなります。
顧客満足度の向上
迅速かつ正確な配送はECサイトの信頼性を高め、顧客満足度を向上させます。注文後すぐに発送準備が始まり予定通りに商品が届けられることは、顧客にとって安心感に繋がり、ポジティブな購買体験を提供します。
運営コストの最適化
非効率な供給体制は過剰在庫による保管コストの増加、欠品による緊急手配コスト、誤出荷による返品・再発送コストなど、様々な無駄なコストを発生させます。供給体制を最適化することでこれらのコストを削減し、利益率を向上させることが可能です。

サンリオに見る供給体制強化のヒント
サンリオは国内物販において供給体制の強化に努め、売れ逃し防止に成功しています。その取り組みはEC事業者が学ぶべき多くの示唆を含んでいます。
定番商品の自動発注化による欠品防止
サンリオは継続的な人気の高い定番商品について自動発注の仕組みを導入しています。これにより人の手による発注作業の負担を減らしつつ、適切なタイミングで自動的に商品が補充されるため、欠品リスクを大幅に低減しています。ECサイトにおいても、売れ筋の定番商品に関しては、過去の販売データや現在の在庫状況に基づいた自動発注システムを導入することが、販売機会の損失を防ぐ上で非常に有効です。
供給チェーン全体のシステム改善
サンリオは国内物販の売上増加要因として供給チェーンシステム全体の改善を挙げています。これは単に一部のプロセスを効率化するだけでなく、商品の企画・生産から物流、販売に至るまでの情報の流れや物理的な流れを統合的に見直し、最適化を図る取り組みです。EC事業者も、バックエンドシステム(在庫管理、受注管理、顧客管理など)を連携させ、サプライチェーン全体を可視化し、ボトルネックとなっている箇所を特定して改善していく必要があります。
物流体制の強化に向けた投資
中期経営計画において、サンリオは物流体制の強化に向けた倉庫の増床に言及しています。これは増大する物流量に対応し、より効率的な配送を実現するための物理的な基盤強化の重要性を示しています。ECサイトの成長に伴い取扱量が増加した場合、自社の物流体制を見直したり、よりキャパシティやサービスの質が高い外部の物流パートナーへの委託を検討したりすることが必要になります。

ECで構築すべき効率的な供給体制の要素
サンリオの事例も踏まえ、ECサイトで効率的な供給体制を構築するために具体的に取り組むべき要素は以下の通りです。
正確な需要予測
過去の販売データ、季節性、プロモーション計画、外部要因(トレンド、ニュースなど)を分析し、商品の需要を可能な限り正確に予測します。予測精度が高ければ、適切な量の在庫を適切なタイミングで準備することができ、過剰在庫や欠品を防ぐことが可能です。
リアルタイムでの在庫管理
ECサイトと倉庫の在庫情報をリアルタイムで連携させることが不可欠です。在庫管理システムを導入し、商品の入出荷、販売による在庫変動を常に正確に把握することで、誤った在庫情報の表示や、在庫がない商品の受注を防ぎます。複数の倉庫がある場合は、全体の在庫状況を一元管理できるシステムが理想です。
自動化とシステムの活用
サンリオの自動発注のように繰り返しの多い定型業務は可能な限り自動化を進めましょう。受注処理、出荷指示、在庫補充通知などにシステムを活用することで、人的ミスを減らし、業務効率を大幅に向上させることができます。
信頼できる物流パートナーとの連携
自社で物流機能を全て持つことが難しい場合、経験豊富で信頼できる外部の物流代行会社(3PLなど)との連携を検討しましょう。梱包、出庫、配送といった物流業務を委託することで、専門知識を活用し、効率的で質の高い物流サービスを実現できます。
物流プロセスの最適化
梱包方法の見直しによるコスト削減や破損リスク低減、最適な配送ルートの選定によるリードタイム短縮、追跡システムの導入による配送状況の可視化など、物流プロセス全体の最適化を継続的に行います。
返品・交換プロセスの効率化
ECにおいては返品や交換が発生する可能性も高いため、これらのプロセスを効率化することも供給体制の一部です。迅速かつ丁寧な返品・交換対応は、顧客満足度を維持し、リピートに繋げる上で重要です。

まとめ
サンリオの成功事例からも明らかなように、EC事業の成功には、魅力的な商品力と並んで、強固で効率的な供給体制が不可欠です。正確な需要予測に基づいた適切な在庫管理、自動化された発注・出荷プロセス、最適化された物流、そしてサプライチェーン全体を可視化し連携させる取り組みは、販売機会の最大化、顧客満足度の向上、そして運営コストの最適化を実現します。
ECサイトの成長を目指す上で、供給体制の構築と継続的な改善は避けては通れない道です。サンリオのようにテクノロジーの活用やシステム改善、必要に応じた投資を行うことで、変化の速いEC市場においても顧客の期待に応え、持続的な成長を遂げることができるでしょう。

サンリオ成長戦略から学ぶ【全9話】
- サンリオ決算概要:過去最高益はなぜ? | サンリオ成長戦略から学ぶpart1
- Z世代とインバウンド集客 | サンリオ成長戦略から学ぶpart2
- 複数キャラクター戦略の力 | サンリオ成長戦略から学ぶpart3
- EC海外展開の要!サンリオ中国事例 | サンリオ成長戦略から学ぶpart4
- EC販促ヒント!イベント・コラボ効果 | サンリオ成長戦略から学ぶpart5
- ECの要!売れる商品と供給体制 | サンリオ成長戦略から学ぶpart6
- ECブランド戦略:永続IPの育て方 | サンリオ成長戦略から学ぶpart7
- ECグローバル基盤:海外成長の鍵 | サンリオ成長戦略から学ぶpart8
- ECの未来:収益多角化の可能性 | サンリオ成長戦略から学ぶpart9
EC向け撮影プラン詳細はこちら

名古屋の飲食業界で商品開発や販促に15年携わる。現在はスイーツECを展開しつつ、飲食・EC向けに撮影を通じたビジュアルマーケティングを支援。
食と空間の魅力を引き出すためのブランディングや販促のヒントを発信中。