ECの未来:収益多角化の可能性 | サンリオ成長戦略から学ぶpart9

EC ブランディング

サンリオの近年の著しい成長は既存事業の強化に加え、新たな収益の柱を模索する積極的な姿勢によってもたらされています。特に中期経営計画において掲げられた「IPポートフォリオ拡充とマネタイズの多層化」は、単にグッズ販売に留まらない、多様な方法でIPの価値を収益に繋げていくという強い意思を示しています。この戦略は物販中心のECサイトが、将来にわたり持続的に成長していくための重要なヒントを与えてくれます。

シリーズ最終回となるパート9では、サンリオの「マネタイズの多層化」戦略を参考に、ECサイトが物販以外の多様な収益源を確保し、未来へ向けた成長を実現するための可能性について考察します。

サンリオが目指す「マネタイズの多層化」

サンリオはこれまでの「グッズ中心」のビジネスから脱却し、IPの提供価値の幅を広げ、多様な収益機会を創出することを目指しています。これは成熟市場である日本でのさらなる成長や、グローバル市場での安定した収益確保のために不可欠な戦略と位置づけられています。

「寄り添い時間」から「夢中時間」の創出へ

サンリオはこれまでの商品の購入を通じて顧客に「寄り添い時間」を提供してきたことに加え、今後はゲームやイベントなどを通じて顧客がIPの世界に深く没入する「夢中時間」を創出することを目指しています。この「夢中時間」の創出は、新たな収益源を生み出す重要な要素となります。

IP提供価値の多様化

マネタイズの多層化の具体策として、サンリオはIPの提供価値を多様化する取り組みを進めています。従来のグッズ販売に加え「推し活」といった付加価値提供、映像やゲームを通じたストーリー型IPの確立、そして教育やリアル体験を通じたIP体験の創出などが挙げられています。これらは様々な顧客ニーズに対応し、多様な角度からIPの魅力を提供することで、収益機会を拡大しようとするものです。

新規事業領域への投資

サンリオはゲーム事業への本格的な投資や、デジタル領域でのクリエイター支援プラットフォーム構築、エデュテイメント分野への拡大など、IPを活用した新規事業領域の開拓にも積極的に取り組んでいます。これらの新しい試みは将来の収益源を確保するための重要な種まきと言えます。

マネタイズの多層化

ECサイトにおける収益多角化の可能性

サンリオの「マネタイズ多層化」戦略は、ECサイトが物販の枠を超え、多様な収益源を持つプラットフォームへと進化していくための大きなヒントとなります。

デジタルコンテンツの販売

ECサイトで販売するのは必ずしも物理的な商品である必要はありません。キャラクターのデジタル壁紙、オンラインで使用できるアバターアイテム、限定のショートアニメーションや音楽コンテンツなど、様々なデジタルコンテンツを販売することが可能です。これにより商品の製造や在庫管理にかかるコストを抑えつつ、新たな収益源を確保できます。サンリオがデジタル領域での取り組みを強化していることは、この可能性を示唆しています。

サブスクリプションモデルの導入

特定の期間、限定コンテンツへのアクセス権や定期的なデジタル・リアルアイテムの配送、会員限定サービスの提供などを組み合わせたサブスクリプションモデルは、継続的な収益を生み出す有効な手段です。サンリオが提供する語学プログラムの会員制度や、過去のサプライズボックスとのコラボレーション事例は、ECサイトでのサブスク導入の可能性を示しています。顧客にとってお得感や特別感のあるサブスクを提供することで、顧客ロイヤリティの向上にも繋がります。

ECプラットフォームのライセンス活用

サンリオのライセンス事業は非常に利益率の高いビジネスモデルです。ECサイト自体を他のブランドやクリエイターに対して、自社のキャラクターやデザインのライセンスを提供し、共同で商品を企画・販売するプラットフォームとして活用することも考えられます。これによりライセンス料収入という新たな収益源を獲得できます。またこれはパート3で触れた複数キャラクター戦略やパート5で触れたコラボレーション戦略とも連携する可能性があります。

オンラインイベントとバーチャル体験の収益化

パート5で解説したようなオンラインイベントや、メタバース空間でのバーチャルイベントなどを開催し、参加費や限定アイテムの販売などで収益化することも可能です。サンリオがバーチャル音楽フェスなどを開催しているように、ECサイトの顧客を対象とした独自のオンラインイベントは新たな収益源となるだけでなく、顧客エンゲージメントを高める効果も期待できます。

ECサイトを通じたライセンスアウト

自社で育成したIPやデザインを、他の企業やECサイトに対して商品化権としてライセンスアウトするビジネスモデルを、自社ECサイトの運営と並行して展開することも可能です。自社ECサイトでの成功事例を示すことで、ライセンス先の企業に対してIPの魅力をアピールし、ライセンス契約の獲得に繋げることができます。

広告・アフィリエイト収入

ECサイトの集客力が高まれば、サイト上の広告枠を販売したり関連商品の紹介によるアフィリエイト収入を得たりすることも、収益多角化の一つの方法です。サイトのトラフィックや顧客層に合わせた広告戦略を展開することで、物販以外の安定した収益源を確保できます。

収益多角化の可能性

まとめ:ECの未来を切り拓く多角化戦略

サンリオの「IPポートフォリオ拡充とマネタイズの多層化」戦略は、ECサイトが物販という単一の収益源に依存するリスクを軽減し、将来にわたる安定的な成長を目指す上での重要な指針となります。デジタルコンテンツ販売、サブスクリプションモデル、ECプラットフォームのライセンス活用、オンラインイベントの収益化など、ECサイトには物販以外にも多様な収益を生み出す可能性が秘められています。

まとめ

サンリオがキャラクターという強力なIPを軸に、常に新しい価値提供の方法を模索しているように、EC事業者も自社の強みや顧客基盤を活かし、ECサイトを単なる販売チャネルから顧客にとって多様な「体験」と「価値」を提供するプラットフォームへと進化させていくことが求められます。サンリオの戦略から学び、ECサイトの収益構造を多角化することで、変化の激しいデジタル時代においても持続的な成長を実現しECの未来を切り拓いていきましょう。長いシリーズでしたが最後までお付き合いいただきありがとうございます。

サンリオ成長戦略から学ぶ【全9話】

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