EC売上アップの新戦略|カテゴリーエントリーポイント(CEP)活用法

EC ブランディング

広告費をかけても売上が伸びない理由

「広告予算を増やしているのに売上が思うように伸びない」「競合サイトに顧客を奪われてしまう」—このような悩みを抱えるEC事業者は少なくありません。

多くのECサイトでは、特定のターゲット層に絞ったマーケティングや商品の差別化に注力しています。しかし最新のマーケティング研究によると、これだけでは成長に限界があることが明らかになっています。

実は、ブランド成長の真の鍵は「差別化」よりも「間口の広さ」にあるのです。具体的には顧客がどのような状況やタイミングでその商品を「買いたい」と思うか—つまりカテゴリーエントリーポイント(CEP)を捉え、そこに自社ブランドを結びつけることが重要となります。

この記事では参考記事を元に、EC事業でのCEP活用法を解説していきます。

カテゴリーエントリーポイント(CEP)って何?

CEPの具体例

CEPとは顧客があるカテゴリーの商品を「買ってみようかな」「使ってみようかな」と考え始める、頭の中の記憶や状況的な「きっかけ」のことです。

例えばコーヒー豆を販売するECサイトの場合、顧客の購入検討が始まるきっかけは以下のようなものがあります:

  • 朝起きて一杯目のコーヒーを淹れようと思った瞬間
  • 仕事の休憩中に気分転換したくなった時
  • 友人が訪問する際に美味しいコーヒーを出したいと考えた時
  • リラックスしたい気分になった時
  • SNSで魅力的なコーヒーの写真を見た時

CEPが購買行動に与える影響

消費者は日常生活の中でこうした「きっかけ」に触れた瞬間、「日常モード」から「商品購入検討モード」に切り替わります。そしてその「きっかけ」と強く結びついているブランドほど、消費者に思い出してもらいやすく、結果として選ばれる確率が高くなるのです。

カテゴリーエントリーポイント(CEP)って何

なぜ今EC事業者にCEPが重要なのか

従来のマーケティング手法の限界

従来のSTP戦略(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)では、特定のターゲット層を絞り込み、その人たちに刺さる独自の価値提案を強くアピールすることが重視されてきました。

しかし実際の成長データを分析すると、成功しているブランドは特定の顧客層だけでなく、様々な顧客層から新規顧客を獲得していることが分かっています。

「ライトユーザー」獲得の重要性

大きなブランドがシェアを維持・拡大している理由は、単にリピート率が高いだけでなく幅広い層の「ライトユーザー」を多数取り込んでいるからです。

シェアの大きなブランドほど、より多くのCEP(購入のきっかけ)と結びついており、様々な「きっかけ」で思い出してもらえる「間口の広い」状態を作り出しています。その結果、顧客に想起される総回数が増え、選ばれる確率が向上するのです。

ECサイトでも同様に、コアなファンだけでなく様々な「ちょっと買いたい」と思うライトユーザーを、多様な「購入のきっかけ」でサイトに呼び込むことが成長には不可欠です。

なぜ今EC事業者にCEPが重要なのか

CEP活用のステップ

成功のための5つのステップ

CEP戦略を成功させるには、以下の順序で進めることが重要です:

  1. カテゴリー理解
  2. メンタルアベイラビリティの診断
  3. ゴール設定
  4. CEP調査・分析
  5. 施策実行

ステップ1:カテゴリー理解の重要性

まずは、あなたのECサイトが扱っている商品カテゴリーの特徴を深く理解することから始めます。商品の購買パターンはカテゴリーによってある程度決まっているからです。

  • 日用品なのか、趣味性の高い商品なのか
  • 価格重視で選ばれるのか、ブランドイメージが重要なのか
  • カテゴリー内での自社の立ち位置
  • トップクラスのECサイトとの差異

これらをデータに基づいて把握することが、CEP戦略の土台となります。

ステップ2:メンタルアベイラビリティの診断

次に、顧客があなたのECサイトやブランドを「どれだけ記憶しているか」「どのような文脈で思い出すか」という「記憶構造」を分析します。これを「メンタルアベイラビリティ」と呼びます。

診断すべき4つのポイント

  1. 認知度:サイトやブランドを知っている人の割合
  2. 想起率:購入検討時に思い出してもらえる割合
  3. 競合比較:特定の購入きっかけでの想起されやすさ
  4. 顧客層別の記憶度:どの顧客層で記憶が薄いか

この「記憶の健康診断」により、課題や改善ポイントを定量的に把握し、CEP調査の方向性を決定します。

ステップ3:ゴール設定

明確なゴール設定

カテゴリー理解と診断結果に基づき、具体的なゴールを設定します:

  • 新規顧客獲得を重視するのか
  • リピート率向上を目指すのか
  • 客単価アップを狙うのか

ステップ4:CEPの調査

顧客調査による方法

  • ヒアリングやアンケートで「いつ」「なぜ」「どこで」「何をしている最中に」購入したかを深掘り
  • ECサイトのレビューやSNSでの顧客の声を分析

CEPの選び方と優先順位決定

メンタルアドバンテージ分析

収集したCEPについて顧客アンケートを実施し、「それぞれのCEPと自社ブランド/競合ブランドがどのくらい強く結びついているか」を調査します。

これにより以下が明確になります:

  • アドバンテージCEP:自社が想起されやすいきっかけ
  • ディスアドバンテージCEP:競合に比べて弱いきっかけ

規模別戦略の違い

小規模ECサイトの戦略 「ニッチなCEPを狙うべき」と考えがちですが、実際は大手サイトが狙う「大きなCEP」からシェアを奪うことを考えるべきです。大きなCEPは多くの顧客にとって典型的な購入きっかけであり、獲得できる顧客数も多いからです。

大規模ECサイトの戦略 既存のCEPに加えまだ存在しない新しいCEPを創出し、カテゴリー全体の利用機会を拡大する「市場の再定義」も視野に入れます。

ステップ5:ECサイト施策への落とし込み

基本の方程式

商品属性(商品の特徴)× 利用文脈(CEP)= 顧客価値

商品の機能や特徴を、ターゲットCEPを持つ顧客にとって「都合がいい」「役に立つ」価値として「翻訳」することがポイントです。

4P戦略での実践

Product(商品/品揃え) ターゲットCEPに最適な商品開発・品揃え 例:「仕事の休憩中にリラックス」というCEPに向けた手軽なドリップバッグコーヒー

Price(価格) ターゲットCEPでの競合価格を考慮した戦略的価格設定

Place(流通/サイト内導線) ターゲットCEPで商品を探している顧客がスムーズにたどり着けるサイト設計

Promotion(プロモーション)

  • ターゲットCEPを明確に打ち出した広告・SNS投稿
  • 「仕事の合間にホッと一息」といった利用シーンを想起させるコピー
  • 商品ページでの機能説明と利用文脈の結びつけ
CEP活用のステップ

まとめ:CEP戦略でEC成長を加速させる

カテゴリーエントリーポイント(CEP)は、EC事業者が顧客の多様な「購入のきっかけ」を捉え、自社サイトやブランドをそこに結びつけることで、売上向上と成長加速を実現する強力なフレームワークです。

単なるテクニックではなく、ECサイトのビジネスゴールに基づき、カテゴリーや顧客の記憶構造を理解した上で、戦略的にCEPを発見・選択・実践・測定していくPDCAサイクルが成功の鍵となります。

広告費を増やすだけでは限界がある今、CEP戦略を活用して新たな成長の道筋を見つけてみてください。

まとめ

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