顧客をファンに変える。売れるブランドが実践する「ストーリーの7つの要素」

EC ブランディング

前回の記事では多くのマーケティングが失敗する理由が「複雑すぎる」からであり、ビジネス最大の敵は「雑音」であると解説しました。そして言葉や写真から余計な情報を取り除くことが、お客様にメッセージを届ける第一歩だとお伝えしました。

では具体的に何を基準に情報を整理し、シンプルで強力なメッセージを組み立てればよいのでしょうか。

これには世界中の人々を魅了する映画や小説、そして成功している有名企業が活用している「魔法の公式」が存在します。それが今回ご紹介する「ストーリーブランド7つのフレームワークです。これを用いることで、ビジネスのメッセージを伝えるための強力でブレない「設計図」を手に入れることができます。ぜひご活用ください。

参考:ドナルド・ミラー著 ストーリーブランド戦略―あなたは商品を売っている理由を発信しているか?

あなたのビジネスを「5秒」で伝えるための設計図

優れたマーケティングの最低条件は、お客様があなたのウェブサイトや店舗を訪れたとき5秒以内に次の3つの問いに答えられることです。

  1. この会社は私に何を提供してくれるのか?
  2. それを手に入れると私の生活はどう良くなるのか?
  3. それを手に入れるにはどうすればいいのか?

この3つが瞬時に伝わらなければ顧客は混乱し、あなたのサイトから離脱してしまいます。このフレームワークは、この問いに明確に答えるための、いわば顧客の心を動かすストーリーの設計図です。この「型」に沿って情報を整理するだけであなたのメッセージは驚くほどクリアになります。

顧客へビジネスを「5秒」で伝えるための設計図

これがストーリーの全貌!フレームワークの「7つの要素」

このフレームワークは人々が昔から心を惹きつけられてきたストーリーの普遍的な構造をビジネスに応用したものです。以下の7つの要素で構成されています。

① 主人公:ストーリーの主役は「顧客」である

あなたの会社や商品ではなく、常にお客様がストーリーの主人公です。主人公が何を望んでいるのかを明確に定義することからすべてが始まります。

② 課題:顧客が抱える「問題」を明確にする

主人公(顧客)は、何らかの問題に直面し、それを解決したいと願っています。ビジネスや商品はその問題を解決するために存在します。

③ 導き手:あなたは主人公を導く「賢者」である

主人公が問題を一人で解決することはありません。そこに知恵と道具を授けてくれるの「導き手」が必要です。あなたのビジネスや商品がこの役割を担います。

④ 計画:不安を取り除く「具体的な計画」を提示する

導き手は主人公がどうすれば問題を解決できるか、シンプルで分かりやすい計画を示します。これにより顧客は購入に対する不安を取り除くことができます。

⑤ 行動喚起:成功への「具体的な行動」を呼びかける

顧客は明確に行動を促されない限り行動しません。「今すぐ購入」「席を予約する」といった具体的な行動喚起が不可欠です。

⑥ 失敗:行動しないと訪れる「悲劇」を伝える

もしあなたのサービスを利用しなかった場合、顧客の生活にどんなネガティブなことが起きるのかを伝えます。危機感が行動への動機付けとなります。

⑦ 成功:行動した結果訪れる「最高の未来」を見せる

あなたのサービスを利用することで、顧客の人生がどのように明るく素晴らしいものになるのか。その理想の未来像を具体的に描きます。

フレームワークの「7つの要素」

【ビジュアルで伝える】7つの要素を表現する写真の力

この7つの要素は文章だけで伝えるものではありません。前回の記事で触れたように、高品質な「写真」は、各要素を瞬時に、そして感情的に伝える絶大な力を持っています。

例えば、

  • 「成功」の要素は、あなたのレストランで記念日を祝い、満面の笑みを浮かべるカップルの写真一枚で表現できます。
  • 「課題」の要素は、ECサイトで売っている便利な調理器具がないために、キッチンでイライラしている人の写真で示すことができます。
  • 「導き手」の要素は、清潔なコックコートを着て自信に満ちた表情で腕を組むシェフの写真で、その道のプロとしての信頼感を表現できます。

プロによる撮影はこうしたストーリーの各要素を的確に切り取り、顧客の感情に直接訴えかけるビジュアルを作り出すために不可欠です。

7つの要素を表現する写真の力

【解説】カフェを例に7つの要素を当てはめてみよう

このフレームワークをカフェの例で考えてみましょう。

  • ① 主人公: 都会の喧騒に疲れ、心から安らげる時間を求めているビジネスパーソン。
  • ② 課題: 大手チェーンのカフェは騒がしくて落ち着かず、リラックスできない。
  • ③ 導き手: 静かな空間と一杯ずつハンドドリップで淹れるコーヒーにこだわる、あなたのカフェ。
  • ④ 計画: 1. お好きな豆を選び、カウンターで注文する。 2. 窓際の特等席でくつろぐ。 3. こだわりの一杯で、自分だけの時間を取り戻す。
  • ⑤ 行動喚起: 「カウンターでご注文ください」
  • ⑥ 失敗: このカフェを知らなければ、今日も騒がしいカフェで妥協し、貴重な休息時間を無駄にしてしまう。
  • ⑦ 成功: 誰にも邪魔されない静かな空間で、最高のコーヒーと共に自分をリセットし、午後への活力を得る。

このように当てはめるだけで、何を伝えるべきかが明確になります。

まとめ:このフレームワークがあなたの事業の羅針盤になる

今回ご紹介したフレームワークは、あなたのビジネスが発信するあらゆるメッセージの「羅針盤」です。ウェブサイト、SNS、チラシ、メニュー、そして写真。すべてをこの7つの要素に沿って一貫させることで、あなたの発信する情報は「雑音」から「心に響くストーリー」へと変わります。この強力な設計図を手に入れ、顧客をファンに変えるための大きな一歩を踏み出しましょう。

事業の羅針盤


【次回予告】
フレームワークの全体像を理解したところで、次回からは各要素をさらに深く掘り下げていきます。
次回は、ストーリーの土台となる最も重要な前半部分、「①主人公」「②課題」「③導き手」について、あなたのビジネスにどう当てはめ、顧客との強い絆を築くか、具体的な方法を徹底解説します。

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