【第2部】プロカメラマンが教える!飲食店インスタ運用の決定版:「食べたくなる」撮影テクニックの新常識
目次
はじめに
飲食店がInstagramやSNSで集客を狙うなら、写真や動画の「ビジュアル力」は欠かせません。これまで多くのオーナーやスタッフが意識してきたのは、「シズル感」。湯気、油の跳ね、香りを想起させる演出──確かにこれらは重要な要素です。
しかし、前回の実験結果から明らかになったのは、「シズル感だけでは不十分」だということ。本当に人の食欲を刺激するには、別のルールが存在していたのです。
「食べたくなるビジュアル」の新ルール
ここからは、すぐに使える実践的な「新ルール」をご紹介します。そして、具体例を交えながら解説していきます。
【新ルール1】完成形を必ず見せる
「まだ調理中」ではなく、「今すぐ食べられる」状態を撮影すること。
脳は「完成品」「食べられる状態」に対して、最も強く快楽を感じます。シズルだけでは「この先どうなるか分からない未完成品」に見えるリスクがあるのです。
【具体例】
- 焼きたてのハンバーグを、鉄板に乗せたまま撮るだけでなく、ナイフを入れて肉汁が溢れた断面を写真に収める
- 盛り付けたパスタなら、湯気が立っている+具材が光っている完成形をレンズでアップに撮る
- ラーメンなら、湯気だけでなくチャーシューや麺をリフトアップして全体が見えるような構図で撮影する
【新ルール2】アクションを取り入れる
動きがあると「できたて感」や「ライブ感」が生まれ、リアリティが増す。
動きのある瞬間を捉えた写真は、単なる静止画像よりも圧倒的に本能に訴えかけます。プロカメラマンはこの瞬間を逃さないよう、連写機能を活用して撮影しています。
【具体例】
- 焼きあがったステーキに、最後の仕上げで塩をふる瞬間をシャッターチャンスとして捉える(Dタイプ)
- 熱々のスープを、おたまでよそう瞬間を光の当たり具合も意識して撮る
- 完成したピザを、ナイフでカットしてチーズが伸びる瞬間を高速シャッタースピードで押さえる
- デザートなら、スプーンを入れて断面が見えるタイミングを被写界深度を調整して撮影する
【新ルール3】視認性を最優先する
どんなに臨場感があっても、料理本体が見えなければ意味がない。
脳が一瞬で「美味しそう!」と判断するには、
- 料理の形
- 焼き加減
- 食材の質感
これらがハッキリ見えている必要があります。撮影時の照明や構図選びが極めて重要です。
【具体例】
- 塩が舞う演出をするなら、肉や料理本体にしっかりピントを合わせ、F値を調整して撮影する
- 湯気を強調したいなら、あえて背景を暗くして、料理本体をライトアップする照明テクニックを使う
- オーブン料理なら、焼き目やとろけたチーズがはっきり写る角度を選び、レフ板を使って陰影を付ける
【まとめ:新ルール3箇条】
ルール | ポイント | 具体アクション例 |
---|---|---|
完成形を見せる | 料理の「ゴール」を写す | 肉断面、盛り付け完成図 |
アクションを入れる | 食べる直前の動きを演出 | カット、取り分け、塩ふり |
視認性を優先する | 食材本体が一瞬で分かる画 | ピント、照明、アングル調整 |

名古屋の飲食業界で商品開発や販促に15年携わる。現在はスイーツECを展開しつつ、飲食・EC向けに撮影を通じたビジュアルマーケティングを支援。
食と空間の魅力を引き出すためのブランディングや販促のヒントを発信中。