飲食店マーケティングの核心:本能に刺さる戦略とは【パート2】
目次
顧客の心を掴む:好意と魅力の関係
「好き」という感情が購買を左右する
前回の記事では、人間の脳における購買決定プロセスの第一関門「重要性」について解説しました。今回は第二の関門である「好意度」について掘り下げていきます。
お客様が「このお店好きだな」と感じるとき、それはただの偶然ではありません。脳科学的に見ると、これは非常に重要な購買判断のステップなのです。
「好き」は瞬間的な価値判断
「好きか嫌いか」というのは、お客様のプレファレンス(好み)そのものであり、価値判断の本質です。その瞬間に「価値がある」と認識させるためには、魅力的なベネフィット(お客様にとっての具体的な利益)を明確に伝えることが重要です。
例えば、あなたのレストランの料理写真が美味しそうに撮影されていれば、お客様の脳は瞬時に「美味しそう!」という好意的な判断を下します。

期待を超えることの重要性
お客様の好意を獲得するためには、「期待を上回ること」が大切です。期待とは消費者の脳が持っている「こんなものだろうと思っている相場感(基準、ベンチマーク)」です。それをわかりやすく超えることで、価値を端的に理解させることができます。
具体的には:
- 一般的なイタリアンレストランならピザの種類が10種類程度なのに対し、あなたのお店では30種類提供している
- 通常はランチタイムのみのサービスを、朝食時間帯にも提供している
- 地域の平均価格よりも質の高いサービスを同等価格で提供している
このような「期待超え」は、お客様の脳に強い好意を植え付けます。

System 1の力:瞬間的な判断の威力
「重要かどうか」や「好きか嫌いか」の判断は、脳内で直感的で速い判断を司る「System 1」によって瞬間的に処理されています。この「System 1」は意識が起動するよりもずっと速く動きます。
実際、私たちの「意識」とは、この直感的な判断の結果を後から追いかけて捉えた認識に過ぎないのです。野球の実況中継のように、実際に起こっている膨大な情報のほんの一部だけをピックアップしているようなものです。
飲食店の「一目で惹きつける」要素
お客様の「System 1」に働きかけるためには、一目見ただけで好意を獲得できる要素が必要です:
- 店舗外観の清潔感と雰囲気
- メニューの視覚的魅力
- スタッフの身だしなみと最初の接客
- 店内の香りや音楽

これらは全て、お客様が意識的に考える前に「System 1」が判断を下してしまう要素です。
今すぐ実践できる「好意度」アップの方法
- ビジュアルの強化:メニュー写真や店内装飾を見直し、第一印象を良くする
- 五感へのアプローチ:香り、音、触感など視覚以外の感覚にも訴える
- スタッフ教育:最初の挨拶と対応が顧客の好意形成に大きく影響することを理解させる

好意度の関門をうまくクリアすれば、第三の関門「納得性」への道が開けます。次回の記事では、この「納得性」について解説します。お楽しみに!
マーケティング戦略を完成させるために
「好意度」は購買決定プロセスの重要な要素ですが、これだけでは不十分です。お客様の脳を完全に攻略するには、「重要性」「好意度」「納得性」の3つの関門すべてを突破する必要があります。脳科学で解き明かす飲食店マーケティングの極意では、デジタル時代に本能に刺さるマーケティング戦略の全体像をまとめています。より効果的な顧客獲得のヒントをご覧ください。

名古屋の飲食業界で商品開発や販促に15年携わる。現在はスイーツECを展開しつつ、飲食・EC向けに撮影を通じたビジュアルマーケティングを支援。
食と空間の魅力を引き出すためのブランディングや販促のヒントを発信中。